Vol.154  バーガーで食べるシーフード

ノンフライの「フィッシュバーガー」

 東京の下町、台東区谷中に店舗を構える「5OCEANS(ファイブオーシャンズ)」は、2022年3月から「シーフードバーガー専門店」で営業している。バーガーメニューの一つがシーフードなのではなく、すべてに魚介類が挟まれている。店内の大型水槽には熱帯魚が泳ぎ、海に関する書籍も揃えるなど、魚への専門性が高い同店を探った。

東京・谷中「5OCEANS」全メニューに魚介類

店主の桑折さん

 店舗がある谷中商店街は、山手線日暮里駅西口を出てすぐ。昔ながらの個人商店を中心に約60店舗並び、地元の住人からは「谷中ぎんざ」の愛称で親しまれている。
 1人で店を切り盛りする桑折孔基さんは、新型コロナウイルス禍を機に「テイクアウト食品が主流になる」と考え開業。これまでの通販会社で培ったマーケティングの経験を生かし、「魚と海が好き」という理由から、フィッシュバーガー専門店を開いた。

 

 

 

 

片手で食べ歩き

大型水槽が目を引く店先

 コンセプトは、「片手で食べるシーフード」。食べ歩きができる商店街という立地から、ハンバーガーを採用した。ママ世代の30代女性や、地元で3世代の家族連れが多いことで、油で揚げない健康的なメニューを提案している。

 一番人気は、スキンレス生ダラを使用した「フィッシュバーガー」だ。少量の油で炒めたパン粉を、生ダラにまとわせて冷凍。注文が入ってからスチームコンベクションオーブンで焼き入れすることで、ノンフライでもパサつかず、揚げたようなボリューム感が生まれる。バンズに粒マスタードを塗り、レタスと選べる3種の手作りソースを合わせて提供する。
 ワンオペの中でいかにおいしく、時短かつリーズナブルに提供できるかを検証した結果、現在の提供スタイルを確立した。過去にはカジキやカレイを使ったバーガーを提供したこともある。現在は「えびバーガー」や「ガーリックシュリンプバーガー」など、価格、サイズの安定したバナメイエビを使ったメニューを多数展開している。

提供もファストに

7~8種の海水熱帯魚が出迎える

 店外からも見られる大型の水槽は、桑折さんが「やなか水族館」と名付けた。「ずっと見ていられる」と、子供から大人までとりこにしている。店内には、美しい海や海洋生物が掲載された本も常備しており、「海や魚、海洋保全にも関心をもってほしい」と展望する。
 桑折さんは「個人店だからこそできる」と、高い頻度でメニューを改善している。味はもちろんだが、「ハンバーガーはあくまでファストフード」と、提供時間が5分で済むよう、日々オペレーションを研究している。

 開業前にはフィッシュバーガーを提供する店を食べ歩き、味付けや価格帯、提供時間を探求。出店する地域は「テレワークが増加しても商店街からは人が消えない」「20年住んできた地元はなじみがある」と、谷中商店街に決めた。仕入れは商店街の鮮魚店から。「コミュニケーションの中でアドバイスをもらえる」と、人との距離が近いこともメリットに挙げる。
 最近では外国人観光客が増加していることから、英語表記のメニュー表を用意し、グーグル翻訳を駆使して接客している。「ノンフライが健康的で、ハンバーガーも親しみがあるので好評」と手応えを感じる。今後は「未利用魚の導入に関心がある」と、新たな試みも思案している。
 
 ▽問い合わせ先=〒110-0001、東京都台東区谷中3-13-13、エルベ日之出1階、電話03-6761-7049

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