「小さい頃から子供に魚を食べさせたい」と思う人は多い。ただ魚の選び方が分からなかったり、骨が気になってなかなか取り入れにくいのが離乳食での魚介類の利用。そこで子育て世帯も増加中の東京・中野の「こみや鮮魚店」で自身も子育て中という小宮佑介さんに月齢別の魚の選び方など話を聞いた。
ここ10年ほどで町の様子も変わりつつある中野。ファミリー層が増加し、JR中野駅近くに店を構える「こみや鮮魚店」でも赤ちゃん連れの若いお客の姿も増えている。その折、小宮さんは子育て中ということもあり、離乳食で魚を使いたいお母さんの相談に応じたところ、口コミで評判が広まり、ネットでは拾えない専門店の知識を求める若いお客さんが増えている。
小宮さんが離乳食で最も重要視しているのが〝鮮度〟。「魚は鮮度が悪くなると独特のにおいが出る。子供の味覚はとても敏感。鮮度がよく、おいしいと本当によく食べる」と小宮さん。
月齢別に選ぶ魚もポイントがある。離乳食を開始したばかりの頃は白身魚を。タイやヒラメ、カレイなど脂が少なくタンパク質豊富で消化にもよい白身魚から始め、ゆでて裏ごしする。「塩分をできるだけ控えた方がよいので、素材の鮮度がとても重要」(同)という。ホウレンソウやニンジンのピューレなどを組み合わせると味のバリエーションも出る。
生後7~8か月ごろからはマグロなどの赤身の魚が次のステップ。「マグロは鉄分もあるのでお勧め。焼いてほぐし身にしたら食べやすい」(同)。この時期、サーモンもお勧めで「尾ビレに近い方が骨も脂も少ないので離乳食向け。塩分の多い塩ザケは控えた方がよい」と選ぶ部位や加工にも着目。
生後9~11か月ごろからはアジやイワシなど青身系を使い、焼き魚にチャレンジ。この頃から味噌漬なども大丈夫とのこと。味噌漬にすると若干塩分が高めなので少量を野菜などと合わせて調味素材の一つにしてもよさそうだ。
離乳食は少量ずつ与え、食べられるか確認しながらが鉄則。「嫌がったら、ホウレンソウのペーストを加えたり、ひと工夫することで食べ始めたりする」(同)ので、諦めずに魚を生かす工夫も必要だ。
徐々に形のあるものを食べられるようになってから気になるのが魚の骨。「サケなら尾ビレの骨が少ない方を勧めたり、切り方も工夫して出している」と離乳食仕様で客のニーズに合った提供を心掛けている。「今はネット上にあらゆる情報が載っている。しかし、その情報が本当に正しいか迷っている人は多い。話をしながら料理の提案をしたりすると安心感があるようだ」と小宮さんの父・小宮髙之さん。
最近も小さい頃から店に来ている10代の子が自分の誕生日に魚を食べたいと小骨の多いニシンなどをチョイス。「小さい頃から魚を食べていると自分で食べられるようになってから骨を気にすることもない」(小宮佑介さん)と子供の頃から魚食に触れる重要性を実感した。
離乳食をきっかけに家族で魚を食べる機会が増えたという家庭も増えていることから「離乳食という小さなきっかけでも食卓は変わる」と新たな可能性を見いだしている。