食品スーパーの鮮魚売場では今まで、どんな製品でも冷蔵(チルド)で売るのが最善とされてきた。仕入れ先から納入される際は冷凍(フローズン)でも、わざわざ解凍してから店頭に並べる。フローズンのままだと見栄えが悪く、消費者の受けがよくないと信じられてきたからだ。しかし最近、一部店舗ではフローズン販売が拡大しつつある。東京圏で1、2を争う店舗数の「サミットストア」を運営するサミット?鮮魚部アシスタントマネージャーの中神大作氏にインタビューした。
◇最近の新店や改装店でフローズン販売を増やしているようですね。
◆中神氏/昨年11月に改装した権太坂スクエア店(横浜市保土ヶ谷区)を皮切りに、新店の五反野店(東京・足立区)、改装の馬込沢駅前店(千葉・船橋市)と、今月10日時点で計3店舗においてフローズン販売用の売場を大きく拡充した。
フローズンで納入される製品をいちいち解凍して売ることがそもそもどうなのか、という原点に立ち返って再検討した。商品によっては購入されたお客さまが、チルドの商品を再びご家庭の冷凍庫でフローズンにして備蓄しておくことも多い。
◇解凍・冷凍を繰り返すほど細胞が壊れ、うま味がドリップから逃げて味が落ちますものね。
◆中神氏/最初からフローズンで売れば味が落ちることはなくなるし、品出しも楽になるから、新型コロナウイルス感染拡大により負荷が掛かっている現場負担も減る。
権太坂スクエア店では干物、塩ザケ、ウナギ蒲焼、魚卵などから着手してみた。このうち魚卵は買ってから数日で消費されるケースが多いと分かったので再びチルド販売に戻したが、それ以外は売り上げの推移などに目立った悪影響はみられないことから、フローズン販売を継続している。チルドとフローズンのどちらが最適かをお客さまの使うシーンを想定しながら、鮮魚売場のあらゆる商品で吟味しているところだ。
◇売り上げが変わらないのは驚きです。廃棄(ロス)はどうですか。
◆中神氏/例えば干物ならチルドの消費期限は約1週間、フローズンは1か月だから明確に違う。まだ始めて間もないので数字に出るのはこれからにはなるが、効果は明らかにみえてくると思う。
課題があるとすれば視認性…いわゆる見栄えの問題。真空脱気された商品ならともかく、ラップでパックした商品だと表面が霜に覆われ、中がどうしても見にくくなる。
現在、ラップを扱う業者とフローズンのままでも売場に並べた時に見栄えが保てる包装ができないか、コスト面も含めて調整しているところだ。
また、フローズン販売用什(じゅう)器(器具)の整備も必須。既存店でただちに切り替えていくのは難しいので、今後も改装店や新店中心になると思う。
◇最近は、家庭に冷凍ストッカーを備えた消費者も多いと聞きます。今後も伸びそうですね。
◆中神氏/そうした期待も確かにあるが、自分としてはフローズン販売をすることで生まれた現場の余剰戦力を刺身売場の改善に回していきたい。
お客さまの来店頻度は新型コロナ以降減ったままではあるものの、やはり鮮魚売場の中で買い物に「行って楽しい」を演出できるのは刺身売場次第だと思う。これからもフローズン販売の最適形を探しながら、刺身売場の活性化を進めていく。