Vol.146  豊洲市場の広報戦略

「豊洲の『いちばにゃん』」LINEスタンプ第1弾2種類のうち「市場で働く編」。第2弾も検討中

「豊洲の『いちばにゃん』」LINEスタンプ第1弾2種類のうち「市場で働く編」。第2弾も検討中

 10月8日で開場5周年を迎える東京・豊洲市場。1500以上の場内事業者が所属している場内で最大の業界団体・豊洲市場協会(伊藤裕康会長)は、開場1周年時に立ち上げた「豊洲市場の広報戦略」プロジェクトにより、魚食に絡めた多岐にわたる情報発信を年々強化し、市場活性化を後押ししている。公式ホームページ「ザ・豊洲市場」は昨年リニューアルし、多い日で2万ページビューを記録。このほか、交流サイト(SNS)や案内標識モニターの運用、非公認キャラクターの作成、グッズ販売と幅を広げてきた。開始から3年半の歩みを振り返る。

”本物”の力伝える

富山湾産ホタルイカを取り上げた14日のインスタグラム公式アカウント

富山湾産ホタルイカを取り上げた14日のインスタグラム公式アカウント

 豊洲市場協会が運用しているSNSの公式アカウントは、インスタグラムの「toyosu ̄shijou」とツイッターの「@toyosu ̄shijou」の2つだ。それぞれ1万5000人と5000人台のフォロワーがいる。発信は開市日に毎日行っている。

 担当者が当日(もしくは前日)に売場を歩いて撮影した写真や動画を使い、仲卸業者に聞いた話などを織り込みながら、その日入荷した食材を紹介している。3年半で投稿数は1200件に近づいた。

 水産は大衆魚だけでなく、時に珍品も取り上げる。3年半、毎日紹介していながらネタかぶりが少なく、市場の食材がいかに多種多様かを証明している。タグは「#豊洲市場」「#魚介類」といった日本語だけでなく、魚種の英名のほか「#toyosumarket」「#seafood」「#Japanesefood」などを必ず付して海外向けに発信。海外のフォロワーも増えている。

 「飲食店や小売店の皆さまがリツイートなどして仕入れた魚のPRに使うなど、集客に活用してもらえたら」と話す協会広報担当者は「市場仕入れの醍醐(だいご)味は売場を訪れての〝ついで買い〟。その魅力の一端を伝え、足を運ぶきっかけに」と思いを託す。

案内標識モニター3台

市場前駅改札の案内標識モニター。「食」の情報を継続的に配信中

市場前駅改札の案内標識モニター。「食」の情報を継続的に配信中

 最寄り駅のゆりかもめ「市場前駅」改札口正面の歩行者デッキ上にある大型の案内標識モニター3台を運用しているのも同協会だ。東京都中小企業団体中央会の2020年度の委託事業を利用し、市場に関する動画の複数制作と合わせて設置した。現在は東京都中央卸売市場や市場周辺施設の協力を得て運用している。

 登場以前は案内チラシが新旧問わず壁に多数貼られていて乱雑さが否めなかったが、モニターの登場ですっきりと整理された。マグロセリの開催時間帯(午前5時~6時15分)、一般見学可能な時間帯(午前6時15分~午後3時)、見学不可な時間帯(午後3時~翌午前5時)、休市日の4パターンで案内図を表示。設置時に制作した豊洲市場関連動画だけでなく、一般見学者の関心が高い場内の飲食店案内や公共性の高い動画、産地のPR動画を配信している。

 オンラインで災害情報などを提供できるほか、遠隔操作により分単位で切り替えが可能と扱いやすく、さらなる有効活用法が模索されている。

LINEスタンプ登場

 東京都中央卸売市場の公式キャラクター「イッチーノ」とは別に、豊洲市場単独でのPRに自由度高く使えるようにと同協会で作ったのが、非公認キャラクター「豊洲の『いちばにゃん』」だ。しっぽに仲良しの魚をくっつけたネコのデザインは特に女性に人気がある。

 SNSのサブアカウント(@toyosunyan)として活動しているほか、昨年末から公式LINEスタンプを売り出し、グッズのバッグ(サコッシュ)を作成し市場内の物販店舗で販売している。LINEスタンプは「市場関係者同士のコミュニケーションに用いて市場生活を楽しくするのに役立てたり、産地出荷者や販売先とのやりとりに使われたりして取引の活性化につながれば」(協会広報担当者)と期待している。

来場した方々に満足を

 豊洲市場は、場外エリアにある「千客万来施設(仮)」の開業遅れ、かつ新型コロナウイルスの影響が抜けきらない3月時点でも多い日には1万人前後が訪れる。ネット上の注目度も高く、関心を寄せる人の多くが魚好きであり、市場好きだ。「できる限り多くの方々に豊洲市場をよく知っていただきたい」と協会広報担当者。
 「日々1万人以上のプロが働いていて、多種多様な品物が揃う豊洲市場の潜在能力を最大限引き出して〝本物〟の力を伝え、再発見してもらいたい。一人でも多くの方に、市場や水産・青果物に興味をもってもらい、市場経由の食品を手に取ってもらえるようになれば」と「豊洲市場の広報戦略」の将来像を描く。

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