2018年はサバ食ビジネスが拡大した一年になった。ぐるなび総研の「今年の一皿」にサバが選ばれたほか、サバ缶はクックパッドの「食トレンド大賞」も受賞している。一般社会でこれほどのサバブームが起きた理由を探った。
サバ缶のヒットは、テレビ番組の紹介だけで起きたわけではない。青魚缶詰の主原料のうち、サンマは15年からの不漁で浜値が高騰し原料確保が深刻になった。対してサバは、13年生まれが大量発生群となり、15年秋から原料を手当てしやすくなったことで、缶詰生産各社が一気に集中した。
この15年以降、なぜだか缶詰に最適なサバが多く獲れるようになった。
まずは数量。30年ぶりの大量発生群となった13年生まれは、翌年以降も高い加入が続く起爆剤となって、原料を確保しやすい環境ができた。
次に大きさ。同群は成長が遅く、缶詰には使いやすいが、何年たってもフィレーや〆サバ加工に適した400?超の割合が低い。資源が多すぎて一尾当たりの餌量が不足する「密度効果」などが理由に挙がるが、詳しい解明には至ってない。
最後に脂乗り。盛漁期に脂質含有量が20%を超えるサバは、400?超の大型サイズで出現割合が高かったのだが、13年生まれは200?台でも盛漁期に分厚い皮下脂肪を蓄え、同様のレベルに達した。
こうした背景から「今まで以上においしいサバ缶」の流通が増加し、食機会が増えた。このタイミングで血液や血管を健康な状態に保つエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を多く含み、生活習慣病の予防やダイエット効果もある健康食品としてテレビなどで取り上げられ、サバ缶レシピ本も相次いで発刊された。
料理レシピの検索・投稿サイト「クックパッド」は、加熱調理済みで下味の付く缶詰が「調理工程の少ない時短料理の流れに乗っている」と評価。価格は手頃で保存も利き、手軽に魚を食べられる手段として幅広い料理に活用されたことで、18年の「食トレンド大賞」にサバ缶を選んだ。
同サイトで検索したサバ缶のレシピ数は、18年11月22日現在で3827品。調理向きな水煮缶を鮮魚コーナーに並べる量販店も増えてきた。
人気は外食にも波及する。ぐるなび総研は、飲食店情報サイト「ぐるなび」の総掲載店舗約50万店などが発信する一次情報と、1643万人のぐるなび会員などの閲覧履歴や行動履歴などを掛け合わせたビッグデータから、18年の食の世相を象徴する「今年の一皿」にサバを選んだ。
グラフは青色が飲食店でサバを扱う店舗数、赤色はぐるなび利用者がサバを検索した数字の推移(いずれも指数)。山谷はあるが右肩上がりで伸びており、サバ料理を食べに行くことを目的に検索していることが分かる。
サバ料理も多様化し、選べる時代になった。味噌煮や塩焼き、〆サバなど和食の定番はもちろん、パスタやサラダのほか、トルコ料理のサバサンドも日本流にアレンジされ提供されている。
世間がサバに注目するようになった好循環の根底には、原料の供給量や価格、味の好転が時流に乗っていることが分かる。同様にマイワシも資源が増加傾向にあり、脂が乗った大型魚の漁獲量も増えてきた。缶詰業界ではイワシ利用に再び関心が高まっており、サバに続く大衆魚、青魚ブームになるか注目される。