Vol.150  湖魚を深堀り

「ここ滋賀」で湖魚の魅力をPRする礒﨑組合長(左)、竹上副主幹

 湖に生息する魚「湖魚(こぎょ)」。460本の河川とつながる日本最大の湖、琵琶湖のある滋賀県では消費拡大やブランド化に向けて力を入れてきた。海水魚が食卓を席巻する今、淡水魚の中でも異色を放つ湖魚の魅力を探ってみた。

琵琶湖を有する滋賀に聞く

固有種のホンモロコ


 今回訪れたのは、東京・中央区にあるアンテナショップ「ここ滋賀」。7月中旬の週末は「びわます試食展示会」の期間中で、同県農林水産部水産課水産振興係の竹上健太郎副主幹とJF滋賀漁連の副会長も務めるJF西浅井漁協の礒﨑和仁組合長が取材に応じてくれた。
 普段の生活ではなじみの薄い湖の魚だが、竹上副主幹によると「琵琶湖だけでも50種ほどいる」らしく、食卓に並ぶものに絞っても「種類は豊富で一年を通じて旬を堪能できる」という。
 湖によっては固有種もおり、琵琶湖ではビワマスやホンモロコ、ニゴロブナといった16種が該当。「希少な魚に出合えるのも魅力」のようだ。また同じ種類の湖魚でも地域による違いがあり、琵琶湖のアユを例にすれば「成長しても10センチ程度でコアユと呼ばれている。ウロコが小さく、骨も軟らかいためとても口触りがよい」といい「生態を考えながら、食べ比べしても面白い」と語る。
 ただ意外なことに海のない滋賀県でも「食べる機会は限られている」という現状もある。先祖代々琵琶湖で漁業に従事してきた礒﨑組合長は「昔は魚といえば湖のものを食べていたが、最近ではみんなが集まった時に食べるハレの日の特別な食材になりつつあり、県内でも店頭に並べていないスーパーもある」と残念そうに伝える。
 これらの背景から、同県は約10年前に琵琶湖の特徴的な魚介類(ビワマス、ニゴロブナ、ホンモロコ、イサザ、ゴリ、コアユ、スジエビ、ハス)を「琵琶湖八珍(びわこはっちん)」に選定。普及啓発活動に力を入れ、徐々に飲食店などを中心に湖魚全体の取り扱いを伸ばしてきた。

食卓の当たり前に

 今後の展望について2人は口を揃えて「湖魚を当たり前に食卓に並ぶ魚にしたい」と話す。目下の課題は知名度で「まずは食べてみてほしい」と呼び掛ける。
 おいしさを知ってリピートしてもらうという意味以外にも、礒﨑組合長は「琵琶湖の水は飲み水に使用されることから、昔に比べてきれいになった。しかし、それは人間にとってのよい水であり、温暖化なども重なって魚は減っている。湖魚の存在を再認識してもらって、人と魚の両者にとって豊かな環境を改めて考えてもらいたい」と語っていた。

進化する湖魚

湖魚を使ったさまざまな商品

 湖魚は一般的には佃煮などのイメージが強いが、滋賀県では「琵琶湖八珍」を取り扱う「琵琶湖八珍マイスター」の登場によって、伝統料理以外にもフレンチとの融合など新たな可能性も広がっている。さらに食べ方以外でも、今回店頭でPRしていたビワマスでは、近年になって刺網だけでなく、船からルアーを使って釣る「ひき縄釣り」が解禁。より鮮度がよい魚が手に入るようになるなど、さらなるおいしさを求めて進化している。
 日本には湖が100以上存在するといわれており、湖魚は遠い存在ではない。オンラインショップやアンテナショップを活用すれば、固有種であっても簡単に購入できる環境は整っている現在、食べてみないという選択肢はもったいなくないだろうか。

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