魚を食べる人をもっと増やすためには、おいしさだけでなく、知的好奇心をかき立てる楽しさも必要ではないか。そのアプローチに悩んでいたうぉーくチームは、ついに「魚と食を笑って楽しむ」をコンセプトにした魚食系ラジオ「JUNK FISH!」とのコンタクトに成功。パーソナリティーのかにへーさんと、なおたこさんを取材した。
「JUNK FISH!」は水産食品業界で働くかにへーさん(33)、なおたこさん(31)がパーソナリティーを務める。2020年の海の日に始まってから、月3~4本をPodcast(ポッドキャスト=インターネットで音声データを配信するサービス)で発信している。22年には第3回JAPAN PODCAST AWARDS推薦作品に選ばれた。
◇まずはお二人のことを教えてください。
◆かにへーさん/「おいしい魚の話をもっと面白く伝えたい」の気持ちをどこかで発散したく、食イベントの場で披露するエンターテインメントを手掛けました。その矢先に新型コロナウイルス禍に突入し、予定はすべて消滅。でも「何かやりたい」と、もんもんとしていました。
□なおたこさん/私はイワシとアジの区別すらつかない内陸県の出身です。ただし料理が好きで食品業界に就職し、魚を担当したら沼にハマってしまいました。
◇具体的には?
□なおたこさん/肉は比較的100点を取りやすいけど、魚は鮮度が落ちれば簡単に50点以下へ下がります。半面、魚は産地や季節などで個体差が大きく、300点まで上がることもある。私の本業は一般消費者に提供するBtoCで、安定を必要とされますが、魚のこのブレ幅が楽しくて仕方ありません。
◇(動画投稿サイト)ユーチューブという選択もあったのでは?
□なおたこさん/サラリーマンなので、顔出しのリスクは避けたかったのです。
◆かにへーさん/それに「ポッドキャストがまだない水産の世界に、一石を投じられる」というのも魅力的でした。農業にはいくつかあるんですけどね。
番組は毎回テーマを決めて、基本は2人のトークで構成する。魚を中心に「最近何を食べたか?」を話す「ナニタベ」といった食の話題だけでなく、漁業や流通、飲食の現場を訪ねたルポなどを明るく、リスナーがイメージしやすい工夫を凝らして発信している。
◆かにへーさん/?魚食系?といっても押しつけでなく、「魚を食べたい」「魚が好きになった」と言ってもらえるラジオでありたい。だからテーマにする魚は天然と養殖、生鮮と冷凍など、どちらかに偏りが生じないように。また、一方通行な批判にならないよう、バランスを考えているつもりです。
□なおたこさん/現実を直視し過ぎると暗くなりがち。だからせめてラジオでは明るく話したい。赤身と白身のどっちがうまいかを議論した「紅白魚食合戦」は、ツイッターからの応援投稿も交えながら?赤?と?白?の「ここがいいよね」を深掘りしました。
◆かにへーさん/「大学生だった自分が聞きたいラジオ」を心掛けています。ただ、自分たちが熱量をもてるものがテーマなので、気付くと深く掘ってしまいがちです。
◇アニサキスに特化した回も危機感をあおるのではなく、情報の正確さとともに、「それでも生魚を食べるんだ」の意思を強く感じました。
◆かにへーさん/ずっとやりたいテーマで、シンポジウムにも参加して事前に勉強しました。一方で、楽しませる要素も重要。だから『アニサキスがラジオに電話をしてくれた』というファンタジーも交えました。音声コンテンツだからできる仕掛けです。
□なおたこさん/体験ベースの話は、互いに事前の共有をしません。新鮮な反応ができるからです。だからといってフリースタイルすぎると散らかってしまう。そのため編集はしますが、ゲストを呼んだ時は特にタイムスケジュール表をしっかりと作ります。
◇この取材に際して、うぉーく担当記者も「JUNK FISH!」に登場させていただきました。失礼ながら全体の流れをとらえた台本があり、驚きました。
◆かにへーさん/台本を用意することでゲストも伝えたい内容を言語化してきてくれて、話が転がりやすくなります。
□なおたこさん/無理やりしゃべらせる「驚かし」をしたくないんですよ。だから事前にNG項目も聞いています。
◇コンテンツは100本を超え、テーマ選びが大変ではないですか?
□なおたこさん/「ナニタベ」のように食べ物の話ならば永遠にできます。魚種にフォーカスしても無限。それから魚食の本の紹介。海外在住の人をゲストに招いた魚食事情も広げていきたい。
◆かにへーさん/ラジオを通じて魚食への興味をかき立てられないか。さらに、水産界のポッドキャスト仲間が増えるきっかけにもしたいです。
◇かにへーさんの魚食ラップの裏話も聞きたかったのですが、紙面のスペースはここまで。弊紙の魚食系コーナーに登場いただき、ありがとうございました。
◇◆□/ばいばーい♪