Vol.145  その水産物もアップサイクル!

「アップサイクル」という言葉が身近になりつつある

 最近、よく耳にするようになった「アップサイクル」という言葉。気が付けば水産業界でも徐々にではあるが、その考え方は広がりつつあるようだ。宅配ビジネスを中心に食品のサブスクリプションサービスを提供しているオイシックス・ラ・大地(以下、オイシックス)が取り組むアップサイクル事業を通じ、水産業界でもっと取り組めることはないか探ってみたい。

オイシックス・ラ・大地、フードロス問題に取組む

東海林オイシックス執行役員経営企画本部グリーンプロジェクトリーダー

 オイシックスがアップサイクルに取り組み始めたのは2021年7月。見栄えや食感の悪さなどから畑や加工現場で未活用だった食材約73トン(1月26日現在)のフードロスを削減、環境負荷が低く、新たな価値を加えた自社オリジナルのアップサイクルブランド「Upcycle by oisix」の商品としてよみがえらせ、現在水産物を使った7品を含む63商品になった。

 取り組みの背景となったのは、同社の企業理念にある「これからの食卓、これからの畑」にある。食に対する課題をビジネスの手法を使って解決するという中で、世界的にも問題となっているフードロス問題と向き合う方法を模索。数ある取り組みの中でも、中学生とのコラボで出来上がった3商品の中に、水産物を使った「昆布の根元入り地球よろこーんぶそうめん」が入った。

 東海林園子オイシックス執行役員経営企画本部グリーンプロジェクトリーダーによると、「誰と取り組むべきか考えた結果、子供たちの力が必要ではと考えた」と話す。そこで国連の持続可能な開発目標(SDGs)に積極的に取り組んでいる東京・品川区にある青稜中学のSDGsゼミナールで特別授業を開講、約50人の中学生とアップサイクル商品の共同開発を行うことになった。「まず未活用のものにはどんなものがあるのか、オイシックス側からピックアップしたものを基に自分たちがその原材料を選んで、最終的には価値を付けたおいしい商品に仕上げるというところまで、ディスカッションを重ねながら開発を進めた」。

子供たちに刺激を受ける

出来上がった3商品を文化祭で試食という形でお披露目

 生徒と生産者とはオンラインでつないで生産現場の実態などについて説明を受け、商品化への構想を練った。通常では捨てられてしまうコンブの根元を粉砕し、粉をそうめんに練り込むというものだが、「とてもおいしい商品に出来上がり、文化祭では150食の試食が1時間で配り終えるほどの高評価。オイシックスの電子商取引(EC)サイトでの販売も好評発売中で、子供をもつお母さんたちにも評判がよい。なにせ子供たちの着眼点には驚かされたし、大いに刺激を受けた。実際に家に帰って親とフードロスについて話をしたことで親の考え方に影響も与えているし、今後も中学に限らず子供たちとのコラボは続けたい」と話す。

青稜中学で行われたチームでの議論風景

 また水産物については「フードロスに関する課題も多くあると思うが、取り組み方はあると思う。当社としては、サステイナブルな環境配慮型の商品をより多くのお客さまの食生活に手軽に取り入れていただけるようなプラットフォームになれるよう、引き続き取り組みをしていきたい」と意気込んでいる。

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