冬の風物詩の鍋。家族や友達とつつきながら温まる人気の飲食店メニューだが、今期は新型コロナウイルスがそれを許さない。鍋を楽しむにもソーシャルディスタンスの確保が求められる。そんな中で注目を集めているのが個別に楽しむ「こなべ」だ。㈱ぐるなびは今年の「トレンド鍋®」に楽しみ方のスタイルである「みんなでこなべ」を選定した。現在、全国の飲食店を対象とした「こなべ」日本一を決めるグランプリを開催している。同社営業企画部ぐるなび大学グループリーダーの小崎俊幸氏が「こなべ」をめぐる最新事情を語った。
近年、しゃぶしゃぶやすき焼きなどで一人鍋業態が増えていて、ぐるなび会員を対象とした夏のインターネット調査では、外食で鍋を食べる際に飲食店に求めたいことで「大鍋ではなく個別に取り分けた鍋で提供する」の回答が41・7%の支持を集めて1位だった。「こなべ」を食べてみたい人の数は76・6%に上った。2009年に創設した「トレンド鍋®」史上で初めて、ジャンルではなくて鍋の楽しみ方を選んだのはそうした理由がある。
飲食店の中には、今年の「トレンド鍋®」を発表したあと、1人用の「こなべ」を提供したことがなく、適切なメニューをどう開発したらよいか悩んでいる飲食店も少なからずいた。そんな時にアドバイスとして「『こなべ』は一人ひとりが楽しめる自分専用の鍋。タレやオプションの食材を自分好みにアレンジができるのが魅力です」と伝えると、メニュー開発への“気付き”につながったという声を多くいただいた。
12月末まで一般投票を受け付けている「みんなでこなべグランプリ」には199メニューがエントリーしているが、店のこだわりを前面に出している店が多い。鍋の具材としてはなじみの薄いマグロを具材に入れたり、タイの骨を焼いてからだしを取ったりなどの手間をかけているメニューもある。今日のような社会環境の中で、わざわざ外食に出向くだけの動機につながるような差別化が必要という思いの表れだろう。
また1人用容器は小さくて冷めやすい。そこで常に継続的に温めたり、保温性の高い鍋を使ったり、だしにとろみをつけて熱を閉じ込めたりと、提供方法にもさまざまな工夫が凝らされている。器の小ささを逆手にとって、イセエビなどを丸ごと使って大鍋よりボリューム感を出した例もある。タレを複数用意したり、具材をオプションで付けたりしてアレンジをできるようにすることで、店側としては一品単価も取りやすくなる。
「こなべ」はテークアウトメニューにもしやすい。まずは「こなべ」を自宅で家族や友人と楽しんでもらい、店の味を知っていただくことは将来的な来店の動機にもつながる。新型コロナを取り巻く状況はなかなかに厳しいが、飲食店の皆さまは「こなべ」をうまく店に取り入れて売り上げアップに役立ててほしい。
日本水産はこの秋、「お皿のいらない旨味だしおでん(枕崎製造かつお節)」と「同(しょうが風味)」を発売し、じわじわと人気が出ている。
皿がいらないカップ入りのレトルトおでんで、新型コロナによりコンビニエンスストアなどでの販売がなくなっている中、1人用を求めるニーズに合致した商品として販売を伸ばしており、同社では手応えを感じている。
いずれもダイコン、卵、こんにゃく、チクワ、鶏つくねの5種の具材が入っており、「枕崎製造かつお節」の方は、カツオ節のうま味だしを使用している。
また「しょうが風味」の方は、寒い冬に体が温まるショウガ風味のうま味だしを使用している。フタを開けてレンジで1分20秒温めるだけの商品で、当面1人用ニーズに応えていきそうだ。