Vol.157  国内外から注目の「おにぎり」

数種類の具材がごちそう感を演出

 日本のソウルフード「おにぎり」に、国内外から熱い視線が寄せられている。食に関する調査・研究・発信を行う(株)ぐるなび総研は2023年12月、日本の世相を表す食のトレンド「今年の一皿」に「ご馳走おにぎり」を選んだと発表。さらに今月2日には(一社)おにぎり協会(神奈川・鎌倉市、中村祐介代表)が初の「おにぎりサミット」を開催し、食材の組み合わせから新しい価値提案や地域活性化を模索した。このおにぎりブームが水産業にどのような影響を与えるだろうか。水産品の魅力発信や活用の可能性を探った。

水産品の魅力発信に

おにぎりの可能性を語る中村代表

 ぐるなび総研は23年の「今年の一皿」に、具材をふんだんに乗せた「ご馳走おにぎり」を選んだ。豊富な具材から選べる楽しさや見た目の華やかさ、飲食店で握りたてを味わうスタイルが、若者の間で流行。「3時間並んでも食べたかいがあった」と交流サイト(SNS)の投稿でも盛り上がりをみせている。

 具材はサケやイクラなど昔からの定番食材でも、組み合わせることで「ごちそう感」を演出できる。発表会見に出席したおにぎり協会の中村代表は、昨今の物価上昇を受けて、財布のひもが固くなった消費者だが、おにぎり専門店なら「ちょっとしたお金で、贅(ぜい)沢した気持ちが味わえることも多くの人が訪れる理由では」と分析する。

 人気は国内のみにとどまらない。持ち歩きしやすく手軽に食べられるスタイルは、海外にも受け入れられ、米国やドイツでは呼び名が、ライスボールから「ONIGIRI」に変わりつつある。

初のおにぎりサミット

おにぎりのおいしさに感動する武井さん

 おにぎりに関連する食材をもつ7市区町村の長が集まった「おにぎりサミット」では、各自治体の食材を組み合わせた「究極のおにぎり」を発表。愛媛・今治市の塩、福岡・柳川市のノリを使ったおにぎりに、新潟・村上市の「塩引鮭」、富山・魚津市のベニズワイなどをおかずにした。タレントの武井荘さんらが試食し、おにぎりのおいしさに感動。「さまざまな食材を食べることで生産者を応援できる」と魅力を述べた。

 中村代表は「おにぎりという料理を通して、特産品のPRに加え、地域や企業との連携もしやすい」と示した。さらに観光コンテンツとしての可能性も秘めており、実際に国内ではおにぎりを取り入れたツーリズムが行われ、多くの人が参加している。

未利用魚の活用にも

2023年「今年の一皿」は「ご馳走おにぎり」

 同サミットで発表されたコンビニエンスストアのおにぎりランキングでは、1位が「コンブ」で、2位が「サケ」、3位が「ツナマヨ」と、いずれも水産品の具材が上位を占めた。

 水産品との関わりの深さは周知の事実だが、このブームに水産業はどう乗れるだろうか。中村代表は「知名度の低い未利用魚など、なじみのない水産物をおにぎりにすることで消費者も手に取りやすくなる」と強調する。

 生産者にとっても「おにぎりが手軽な料理だからこそ、新たな取り組みの実証実験に活用できる」と述べた。水産資源の管理など持続可能な取り組みを紹介できる手段の一つだ。

 ただ、自由度の高さから、どのように表現したらよいか迷った場合は、「原点回帰で改めて地域の魅力や食材の特徴に目を向けてほしい。表現するおにぎりの形や宣伝の仕方もみえてくる」と、おにぎりを通じた取り組みを歓迎。「漁師飯のおにぎりがあれば、ぜひ食べてみたい」と提案を投げ掛けている。

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