Vol.125  CFで聞いてみたい、当社の新作に興味ある?

うま味成分を凝縮させる「鯖山漬け吊り干」

 クラウドファンディング(CF)のプロジェクト件数が、新型コロナウイルスの拡大後から急増している。CFには資金の見返りを得ない寄付型などもあり、コロナ禍で「売れない」「助けてくれ」という叫びに対し、短期的な資金調達の手段としても認知されている。ただ、資金や販路に乏しい小規模な食品加工業では、商品化や生産規模を決める動機付けとして支援者の反応を参考にする、市場調査を目的とした利用もあるという。

予算かけずに市場調査

まさに看板商品と位置付ける(右が津久浦社長)

 茨城・神栖市波崎でサバ加工品を製造する津久文(津久浦良典社長)は今冬、新商品「鯖山漬け吊(つ)り干」を完成させた。特に脂が乗った茨城県沖で獲れる800グラム?1キロ程度の大型寒サバを原料に用い、低温室での塩漬けに4日、塩抜き1日を経て2日間干す。新潟県村上市の塩引きサケの製法を参考にしており、「ウチみたいに小さな会社でないと、これだけの手間をかけられない」と話す。現在、商標登録を出願中。
 お勧めの「さっとあぶる程度」で調理すると、食感は生ハムに似る。ただし大量の脂をまとい、肉からは塩辛さを上回る強いうま味を感じる。

展示会に代わる商品PRの場を

 贈答用として一尾丸ごとの個別包装で販売を想定する。だが、展示会はコロナ禍で軒並み中止。PRする場を失った。

 津久浦社長には「絶対の自信がある」との思いがあるだけに、商品に対する世間の反応をつかめないことに苦悩する。現在の在庫販売はもちろん、来季にどれだけ作ってよいかが分からない。次なる一手のアイデアも頭の中にあり、「何か手を打たないと」と、県担当課の助言も得てCFへの挑戦を決意、登録に向けた申請を行っている。

 まずはCF上で発表し、実店舗で販売する。「どれだけの人が商品に関心をもってくれるか」。反応を知りたいという。

ブダイはうまい魚です

下処理をしたブダイのフィレー

 静岡県南伊豆町の南崎漁師倶楽部(平山文敏代表)が地先の海で仕掛ける刺網には、高値が付くイセエビのほかにも、生息域が重なる地魚が掛かる。ただしその魚の8割程度が、未利用魚の代表格とされるブダイだ。

 コロナ禍で外食の機会が減り、不安定な景気から、高級魚のイセエビは魚価が下がっている。経営の一助として、ブダイの商品化を模索した。

 しかし「ブダイは臭い」という印象が強く浸透しており、確かに夏場は磯臭さが増す。そこで究極の血抜き「津本式」を習得。専用ノズルを使った送水で、血液由来の臭みを消した。道の駅や電子商取引(EC)サイトで販売したところ、食感のよさに評価を得るが、丸魚調理を敬遠する人には届きにくい。

ブダイのフリット。返礼品にはレシピカードも付く

 昨年10月にSENA?(生畑目星南代表)のオンラインライブ配信イベントに、ブダイの商品化が取り上げられたことで、?食STORYの米倉れい子代表ら栄養士チームがレシピを考案するきっかけになった。存在感のある皮は、あえて残す。フリットに調理すればザクザクと心地よい歯触りになり、ふわっとした身との対照が楽しめる。相性がよい南伊豆の柑橘(かんきつ)ソースも開発した。

 継続した販売をするには、商品開発費を調達する必要がある。加えて、下処理に手を掛けることで、ブダイのうま味が感じられる商品ができたことを広く知ってもらう手段として、クラウドファンディングに登録した。

短期間で430%達成

「ひすいの粋」

 高級甲殻類を販売するゴダック(東京・中央区)は自社ブランドの豪州産養殖アワビ「翡翠の瞳」の肝を使って作る肝醤油「ひすいの粋」(写真??)を、クラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」を使い、短期間で目標金額10万円を軽く超え、約43万円を販売した。

 マクアケは、70万人近いユーザーを抱え今いちばん人気のCF。「翡翠の瞳」は同社の業務用高級IQFアワビだが、これまで刺身用として供給するために廃棄されていた肝を有効活用し、付加価値を付けようと考案されたのが肝醤油だ。

 こだわり商品を求める消費者に直接アピールし販売できる新たなツールとしてCFを活用した。
 同社では「この肝醤油をきっかけに新規の客先と商談ができたり、当社のアワビの品質を再アピールできた。成功したことで新商品への取り組みや新規販売ルートなど、会社として積極的に取り組むようになったことも大きい」と評価している。

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