Vol.144  魚がもっと食べたくなる、特化型本屋

書店スペースとスタッフの浦上さん

魚に特化した書店「SAKANA BOOKS(サカナブックス)」が昨年7月に正式オープンした。(株)週刊つりニュース(船津紘秋社長)の経営で、東京・新宿区の同社東京本社ビル1階に店舗を構えている。魚の食文化や料理など、魚食に関する本も充実している。

1200冊もの特化型本屋

SAKANA BOOKS店内の様子

 店舗は同社の来客者対応をしていたスペースを活用した。新型コロナウイルス禍で人の出入りが減った空間を、船津社長が釣りの対象である「魚そのものに興味をもてる場所にしたい」と考え、本屋づくりを決断した。釣り文化を残すためにも、「魚が好きな人を増やしたい」との思いが込められている。
 その言葉通り、右を見ても振り返っても魚の本ばかりで目移りする。学術書も扱いつつ、生態から釣り、料理、水族館、自然環境のほか、図鑑や写真集なども充実。「スイミー」などの絵本や「海底二万里」「どくとるマンボウ航海記」といった小説まで、?魚の本?がこれほど発刊されていたとは知らなかった。

お客さんと一緒につくっていく本屋

魚食に関する本も多数取り揃えている

 店舗スタッフの浦上宥海(うみ)さんによると、同店は12平方メートルほどのスペースに約1000冊の本から営業を始めた。以降も浦上さんが魚や海の要素があると判断した中から、「手に取り、心ときめいた本」を追加することで、「今は1200冊を超えています」と、進化を続ける。
 開店から半年以上が過ぎた。つりニュース社屋の一角ということで、当初は「年配の男性が中心になる」と客層を想定していたが、若い女性も多いという。浦上さん自身は水族館巡りの趣味をもち、全国の約80館に足を運んだ。釣り好きの父親にも同行してきた。それでも、「魚に詳しい人は教えてください」というスタンスで、公式ツイッターをまめに更新。
 同店の存在や趣旨が広がると、目当ての本を買う目的以上に「ここに来たら魚の話ができる」と、認識されるようになったそうだ。その過程で紹介してもらった本が店頭に並ぶこともある。「お客さんと一緒につくっていく本屋」との見解を示した。
 昨年は12月24、25日の2日間、サケ・マスに特化した?クリス鱒?イベントを開催したほか、写真展や出版記念イベントも行っている。「魚の本を出版する際には、ぜひ当店で記念イベントを」と呼び掛ける。

魚を食べて読む

お勧めしてもらった本3冊

 「食べる」という視点も同店では欠かせない。本棚には長崎・対馬市のうえはら(株)が開発した「FISH COOK BOOK」も並ぶ。調理不要・長期常温保存可能な水産加工品で、書籍のようなパッケージが特徴だ。(株)木の屋石巻水産の缶詰も棚を埋める。味とラベルの色合いで販売を決めたそうで、本棚に陳列しても場になじむ。
 もちろん、魚食に関する書籍も豊富に揃っている。
 浦上さんにお勧め本を紹介してもらった。
 ●「すしのサイエンス」土田美登世(誠文堂新光社)=酢や塩で魚を〆る意義や発酵、熟成、加熱など、寿司を握るための技を科学で解説する。
 ●「旅するウナギ」黒木真理・塚本勝巳(東海大学出版会)=生物学としての研究だけでなく、食文化や歴史、漁業など、ウナギに関する情報を包括的に記した。
 ●「九州発 食べる地魚図鑑」大富潤(南方新社)=豊富な写真で九州全体の地魚550種を紹介。未利用魚もしっかり食べて活字にしている。

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