Vol.112  訪ねよう街の魚屋

街の魚屋さんの魅力は何といっても対面販売スタイル。培われた営業トークを楽しみたい

 新型コロナウイルスの感染拡大防止で一斉休校が決まり企業が在宅勤務へ移行した中、公共交通機関を利用しての飲食や買い物が減るのに反比例し、住宅街に立地している身近な街の魚屋で消費者が増えて賑わっている。量販店・スーパーでは望めない本物の職人がいて、昔ながらの営業トークで魚の魅力を伝えてくれる街の魚屋の現場をのぞいた。

働き盛りの新規顧客増える

注文を受けマグロ刺身を盛り付ける駒井さん。包丁捌きは熟練の技

 JR中央線と地下鉄・東京メトロが乗り入れるターミナル駅の四谷駅を出て、新宿通り沿いを新宿方面に歩いて5分のところに鮮魚小売店「金駒(かねこま)」はある。1897年に創業した老舗を切り盛りするのは47歳になる駒井栄蔵さん。4代目店主に当たる。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い社会活動が制限される中で、トータルの商売は順風満帆ではない。売り上げの相当部分を占めていた小学校や保育園への学校給食の納め、慶事や法事への仕出しの仕事は振るわないまま。ただ、代わりに店頭を訪れる客は普段の2倍以上に伸びているという。
 店舗は土曜がやや忙しい程度で、平日は給食の納めや仕出し中心に回っていた仕事内容は一変。今は平日も代わる代わるなじみ客が顔を出す。やっと話を聞く時間が取れたのは閉店間際だった。

 駒井さんは「常連さんが訪れる回数も増えたうえに、40~50歳代の方を中心にご新規さんもよく見かけるようになった」と客層の変化を紹介する。魚好きだけど調理が苦手で魚を食べるならもっぱら外食店だった働き盛りの層が、長引く飲食店自粛の中でうまい魚を求めているのだろう。

魚屋が丸魚だけ売っていたのは過去の話。一次加工済みの魚が並んでいる

 量販店・スーパーの鮮魚売場にも確かに魚はあるが質はそこそこ。魚好きを満足させるには物足りない。しかし、自分の足で日々市場に通い、その時々のよい魚を仕入れる街の魚屋ならば、確かな魚を値頃な価格で買うことができる。「ご新規さんは刺身系を買われる方が中心」などと話す。

 駒井さんが仕入れする豊洲市場は今、飲食店需要が落ちているため、よい魚が一時的だが普段より値頃で手に入りやすくなっている。5月初旬のこの日も「ホンダイ(マダイ)、ヒラメ、マコガレイ、イサキ、ホウボウなどなど、いつもは3~4種類しか置けなかった白身が7~8種類と以前の2倍は置ける」と陳列棚は賑やか。値段で手が伸びずにいた、産地から生きたまま運ばれる活魚を豊洲市場で活〆したものも並んだ。「タイ、ヒラメなど弾力があり歯応えのよい活〆の刺身は、若い方ほど喜んでくれる」。

東京・四谷の大通りに面したビルの1階にある「金駒」

 この春は潤沢入荷が続く生インドマグロやはえ縄物の本マグロが中心の刺身マグロは、魚屋の包丁捌きの見せどころだ。食卓を華やかにする刺身に切り出される様子は見ているだけでワクワクすること請け合いだ。

今こそ幅広い客層へ

 鮮魚小売店への来店客増は「金駒」だけではなく、住宅街に立地する都内鮮魚小売店の多くに共通してみられる現象という。新型コロナウイルスの感染拡大のため、多くの人が事業継続に暗中模索で自身も例外ではない。しかし駒井さんは「幅広い客層の皆さまに魚屋の魚を食べてもらえる機会にしたい」と将来を見据え消費者と向き合っている。

 今のところ、丸魚から捌くような凝った料理をしたいという人が増える段階には至っていないが、街の魚屋という魚食の新たな窓口を知る人がこの機に増えるなら、将来の魚食人口によい影響を与えるはずだ。

都内300店舗紹介 東京魚商業協同組合

 街の魚屋さんは以前より店舗数を減らしたものの、まだまだ各地に多くある。駒井さんが所属する東京魚商業協同組合のサイト(http://tokyouoshou.com/)では鮮魚小売店(含む料理店)都内約300店舗をネット上で紹介する。ご新規さんの中にはネットで調べて魚屋を選び、訪れる人も多いようだ。

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