Vol.114  活況のいなせり市場(豊洲仲卸・消費者向けEC)

出品者、消費者のどちらもがスマホで簡単に操作可能な「いなせり市場」

 新型コロナウイルスによる外出機会減で外食産業の水産物需要は低迷する一方、活況を呈したのがネット通販(EC)だ。ただ、好業績を上げたのは消費者向けの販売網をすでに構築していた一部の専門業者で、中小の外食事業者が主要な販路だった卸売市場の水産仲卸などは対応に苦慮していた。そんな事態を打開するため、東京・豊洲市場の東京魚市場卸協同組合では、組合公認の一般消費者向けECサービス「いなせり市場」の緊急増強に踏み切った。横田繁夫常務理事にその狙いを聞いた。

新型コロナ対策で緊急増強

「今までにない反響があった」と話す横田常務理事

 東卸公認の飲食事業者向けの公式ECサービス「いなせり」(いなせり(株)運営)から派生した、一般消費者向けの「いなせり市場」は5月半ばから、消費者向けの鮮魚ボックスの販売を始めた。豊洲仲卸直伝の捌き方や食べ方などの動画配信も同時に行うと、テレビの情報番組に取り上げられた反響も手伝い、ページ閲覧数・注文数とも以前の4~5倍に膨らんだ。

 従来は、「いなせり」の運営会社が仲卸から商品を買い上げて小規模に販売していた。今回の緊急増強では新たな鮮魚ボックスの登場に加え、扱う仲卸の屋号を強調表示する形にした。「組合員の間で今までにない反響があり参加事業者が増えた」と横田常務理事は話す。サイトの設立のほか配送・決済関連の手間がかかるため、水産仲卸の大半の事業規模だとネット通販への即時参入は厳しいが「気軽に参加できる仕組み」として組合員に受け入れられた。

 発注数は日ごと増減はあるものの、北海道から沖縄まで各地から注文が寄せられている。鮮魚をはじめ、マグロや干物などの3種類が中心となっていて、中には家庭で楽しむ「お寿司屋さんセット」なるものも出品されて人気を博す。新型コロナウイルスで外食産業の需要が減退して水産物流通が目詰まりを起こす中で、「魚の消費増が産地の応援になる。一般の方々には魚を食べて元気になってほしい」との思いで推移を見守っている。

業者向けECが本命

近く活性化を計画中のメインサービス「いなせり」のサイト

 ただ、横田常務理事はこのまま消費者向けビジネス拡大に傾注する考えはないと強調する。業者に卸すのとは違い、消費者向けなら多くは使い切りが標準となるし、真空パックや取り扱い説明書などのひと手間が必須になる。細やかな対応は専門業者の得意とするところで、水産仲卸業者が普段の仕事に加えて手掛けるのにはやや荷が重い。

 卸売市場の強みは、卸や仲卸、そして買出人らがそれぞれの立場で専門性を最大限発揮し、全体として大きな力とすること。「われわれは業者向けの販売が使命。今回の『いなせり市場』の緊急増強は、消費者に魚を食べてもらうために何かできることはないかと考えた結果。最終的に飲食事業者向けサービス『いなせり』の知名度向上になれば」という思いでいる。コロナ騒ぎが落ち着き外食産業が復活したら「さまざまな形で『いなせり』の活性化を図りたい」などと展望を話す。

マグロ解体をライブ配信(横浜市場とクックパッド)

ライブ配信の一場面。横浜市場・八清の店舗で(クックパッド提供)

 クックパッド(株)(岩田林平代表取締役)の生鮮食品ECサイト「クックパッドマート」上で、週末に開催中のオンラインマルシェの一つ「市場めぐり」マルシェ内で6月上旬、横浜市場の仲卸・八清による「まぐろ解体ショー&販売会」がユーチューブライブ配信された。

 コロナ禍対策のオンラインマルシェの特別企画として行われ、本マグロの部位(赤身、中トロ、大トロ)を先払いで販売したあとに解体ショーを配信。その日のうちに発送し、市場イベントに参加したようなライブ感を購入者に提供した。同社広報は「先払いだから業者側のリスクが小さい」と取り組みの別の側面も紹介。今後も同様の取り組みを増やす予定という。

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