Vol.136  一流の味をタクシーで運ぶ「うなタク」

「うなタク」のラッピングを施したタクシー

 大きなウナギ蒲焼のラッピングを施して走るタクシーを見かけたことはあるだろうか。正体は、都内の有名ウナギ屋の蒲焼をタクシーで運ぶサービス「うなタク」だ。なぜタクシーがウナギを運ぶのか、どんなビジネスモデルなのか、サービスの生みの親である大栄交通(株)東京本社の武内聡志取締役統括部長に話を聞いてみた。

ウナギ×タクシーの謎に迫る

保温バッグを持ってサービスの内容を説明する武内氏

 サービス誕生は遡(さかのぼ)ること2年前。新型コロナウイルス感染拡大によって外出自粛が進み、会社が休業まで追い込まれたことがきっかけという。何とか生き残る方法を模索した際、思いついたのが、同じ状況で苦しむ飲食店と協力したフードデリバリーだった。

 ただ流行の兆しはあったものの、主流は安価なファストフード。キロ当たりで換算すると、比較的高い乗り物のタクシーとの相性に不安があった。そこでウナギ好きの武内氏が考えを巡らせているうちに、タクシーとウナギの利用者層が似ていることを発見。腐りにくさやタレがこぼれにくい点など運ぶには都合もよく「これならいけるかもしれない」とトップダウンで挑戦を決断した。

 デリバリーの経験はなかったが試行錯誤の末、人を運んでいない時間を有効活用するサービスモデルを考案した。ウナギ屋から注文があると、近くにいる空車状態のタクシーに指令を出して商品を回収させ、顧客への提供から代金回収までタクシー側が担う。

 料金は商品代金プラス宅配料で、店舗から5キロ未満が1500円(現在は2000円)、5~10キロ以内が4000円、それ以降は5キロごと1900円。ウナギ屋にとっては店舗負担手数料がなく、利用者も多く頼むほどお得になるよう設計した。

 ウナギ屋の募集には「まず顧客に知ってもらうことが大事」とし、ブランド力のあるミシュランガイド掲載の店や老舗に絞って、1店ずつ地道に営業した。今までにない提案で戸惑われることもあったが、東京・文京区の有名店「わたべ」が快諾。それだけでなく、老舗のネットワークを生かしてほかの6店舗も紹介してもらい参加店舗を増やしていった。

 始めるにあたっては、同社所属タクシーの半数に当たる40台が食品を運ぶために認可を取得した。「少しでも消費者に出来たてに近い状態で食べてもらいたい」との思いで、運搬するタクシーには保温バッグを搭載するなどの工夫も取り入れた。厳しい外部環境で積極的な投資やPRは困難だったが、武内氏がホームページや車体へのラッピングなどを考えるなど、極力コストを抑えた状態で取り組みがスタートした。

3年目の状況は

ドライバーがウナギ蒲焼を提供する

 サービス3年目を迎えた現在は、提携店舗数は18店舗まで拡大している。一時のような厳しい外出自粛による特需はなくなったが、多い時は一日に14、15件の注文があるそうだ。これまでの累計売上高はおよそ4000万円。利用層は個人と法人が半数ずつ程度で、企業単位では30~50個単位の注文が多く、個人を含めてリピーターも増えている。

 タクシー会社の危機を救い、提携するウナギ屋とユーザーからも好評で、まさに三方よしで発展してきた「うなタク」。武内氏はこれまでを振り返り「正直、本業と比べれば薄利」というが「乗務員が高級店に足を運んで、違う道のプロからお客さまとの接し方を学ばせていただいている。サービスが定着し、満足度も高まってきたので、続けていきたい」と継続の姿勢をみせている。

「うなタク」の展望は

タクシーで運ばれたウナギ蒲焼

 今後の目標は、サービス規模拡大。最近ではウナギ屋から加盟したいという声も増えた一方、提携店舗が多くなりオーダーが賄いきれなくなるリスクもみえてきた。一社40台では運べる限界があるため、同業との協力を検討している。

 運ぶタクシーが増えればよりユーザーにとってはサービスのさらなる利便性の向上が見込まれる。またタクシー会社にとっても「他業種との連携は新しいノウハウの蓄積やビジネスのきっかけが生まれる可能性がある」と語る。今はまだ珍しい「うなタク」だが、将来はタクシー業界の当たり前になるかもしれない。

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