Vol.137  キャッチ&おいしくイート

釣る楽しさと食べるおいしさを伝える中川さん

 コロナ禍に〝3密を回避できるレジャー〟として、釣りを楽しむ人が増えてきた。ならばこれを、魚食人口を増やすチャンスととらえたい。ただ、そもそも釣り人は釣った魚をどう食べているのか。釣りアンバサダーで水産庁の水産政策審議会委員も務める、(株)ウオー代表取締役の中川めぐみさんに話を聞いた。

釣りから始まる魚食道

ある日の西伊豆での釣果

 「私の周囲では」と前置きしたうえで中川さんは、「釣ったあとの食をいかに楽しむか」を考える人が増えているそうだ。数を釣ることが狙いかと思えば「それでは『作業』になる」と異を唱える人もいて、「これだけ獲れれば十分だ」と、〝おかず釣り〟を楽しむ考えも少なくないという。

 実際に中川さんが、釣り経験のない人を誘う時に使う口説き文句の一つは、「人生最高のアジフライを食べない?」だ。釣りたてのアジは刺身が最高かと思いきや、あえてのフライ。しかも対象は、東京湾の岩礁などの根に定住する、通称・黄金アジだ。普段食べるアジフライから、どこまで想像を膨らませたら正解にたどり着くのか--。この誘いに「ぱくり」と食いつくのは、男性より女性が多いらしい。

 数ではなく、魚をおいしく食べることを優先すれば、釣ったあとの処理に手間や時間をかけられる。最近は釣具屋にも、神経〆用のワイヤが売られている。魚捌き専用SAKAKNIFE(サカナイフ)は特に釣り人の間で広がり、水産業界でも知名度の高い〝究極の血抜き〟と呼ばれる津本式が、釣り具ブランドとコラボしたアイテムもリリースされた。

100円均一のハサミも放血に大活躍

 道具のよしあしだけではない。中川さんは100円均一店で購入したハサミで処理する。サバは、その場で腹を切って内臓を抜く。放血もハサミで行う。「カワハギの肝をおいしく食べるために、この手間は惜しくない」と語る。

捌けなくても大丈夫

 自分で料理ができる人は、下船後も楽しみが続く。ただし、魚を捌けない人もご安心を。釣った魚の持ち込みOKという飲食店が増えてきたことも、釣り人口を増やした理由の一つだろう。調理は基本的に有料で、事前の連絡が必須など各店のルールは事前に確認する必要がある。

釣った魚を料理してもらう

 自分の手で釣ったばかりの魚を、飲食のプロに料理してもらうのは格別だ。釣りをした地域ならではの食べ方の提供や、「こんな部位も」という珍味にもありつけることもある。「まずは『飲食店に持ち込む』という気軽さでいいと思う」と、中川さんは釣り初心者の背中を押す。

 釣り人の魚を歓迎する地域もある。新潟・上越市直江津は、釣った魚を調理、提供する飲食店や鮮魚店を一覧にして公表している。県外から来る釣り客に、直江津の街を楽しんでもらう狙いだ。

 静岡・西伊豆町では、釣り人の魚を地域通貨で買い取る「ツッテ西伊豆」が人気だ。町内の飲食店や土産物屋、宿泊施設などで使用できる。漁業者不足で鮮魚店で売る魚が足りず、釣り人の手を借りる取り組みだが、それだけに鮮度や衛生への認識は欠かせない。提携船で船長のレクチャーを受けた魚のみを買い取り流通させる、緩やかな地域内循環が始まっている。

 一方で中川さんは、釣り人口の増加を快く思っていない漁業者の声にも敏感だ。ゴミやマナーの問題も軋轢(あつれき)を生む要因になっている。

放血・氷〆したからこそ食べられるイサキの白子

 しかし、自分で魚を釣った経験があるからこそ、産業としての漁業に理解が広がる。丁寧に処理した魚のおいしさに気付くことで、その対価を払ってでも買いたい〝推し漁師〟との関係も始まる。「消費者と漁業者の距離を縮める入り口に、釣りが関与できることもあるのでは」と提唱する。

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