Vol.135  アサリから考える評価基準

国内産地の多くで、春から夏にかけて身がよくなってくるアサリ

 魚介類の中で、有史以前の生活を今に伝える史跡に貝塚があるように、少なくとも1万年以上前から人々の食を支えてきたのが、現在も食卓に欠かせないアサリをはじめとする二枚貝だ。ここ最近は一部でイメージを悪くしているが、このままにしてよいのか。かつての漁師町の千葉・浦安がルーツで、約70年前に貝類専門店として豊洲市場の前身である築地市場に入場し、今日まで業容を大きく拡大してきた水産仲卸の(株)吉善(よしぜん)の3代目社長・吉橋善伸さんに話を聞いた。

産地に縛られてませんか?

特種物業会ではかき取引委員長を務める吉橋社長

 実家の作業場で地物のアオヤギのむき作業を見たのは、「子供の頃が最後」と語るのは吉善3代目の吉橋社長。今は専業仲卸として日本各地、世界各国からウニ・カキ中心に、さまざまな魚介類を集めて250種1000品目以上を品揃えする。相手の買出人の規模は大小さまざま。高単価品から低単価品まで幅広い質の商品を提案する対応力に定評がある。

 公平な目で日々膨大な商品を見続けてきたからこそ、〝産地至上主義〟ともいうべき偏りのある考えが世間の注目を浴びて、マスコミもあおるだけあおるという昨今の構図に疑問を感じている。

 例えば二枚貝の代表格のカキ。オイスターバーや居酒屋のメイン料理として生食人気が上昇してから、通年楽しむ食材になった。しかし、特定の産地や品種にこだわっていては安定供給が利かない。大産地の宮城や広島のマガキは終漁したが、「長崎産はこれから。京都産や銚子産のイワガキあたりも増えてくる」。

 例えば高級食材アカ貝。国産がほとんどなく「中国産が9割を占めている」が、だから安値ということはなく高値取引されている。仲卸の方と話をすると、世間一般では〝産地至上主義〟が評価をゆがめている例が多いことに気付かされる。Sm224200306t

手間省くむき身販売

「吉善」で販売しているアサリむき身

 熊本県産アサリで起きた産地偽装問題は、間違いなくいつかは正されなくてはならなかった。ただ、これにより商品の評価基準がさらに産地重視になり、品質が軽んじられるような方向に向くとしたら、食文化の継承という点で不幸なことだ。

 「北海道産は冬場がいいが、本州以南の各地のアサリは4~6月の春から夏にかけてがいちばん身がよくなる時期」と吉橋社長。「焼きアサリや『深川めし』などのアサリご飯、酒蒸し、バター炒めをはじめ、イタリアンのパスタなどさまざま楽しめる食材」とPR。「吉善」では、調理の手間が省けるアサリの「むき身」も販売している。

 数の主力の中国産はもちろん、信頼回復へ歩み始めた熊本県産、北海道や愛知県などの他県産含め、産地にこだわり過ぎることなく良質のアサリをよい時に楽しみたい。

中国産だってうまい

POPに「中国産なめんなよ」と赤字で強調

 アサリ産地偽装問題により、外国産物も被害を受けた。だが、物言えぬアサリの身になれば「勝手に国産のラベルを貼っておいて、事態の発覚後は手のひらを返したように偽物扱いされた」というわけで、いい迷惑だ。

 鮮魚泉銀(千葉・浦安市)の店主・森田釣竿氏は「味は何一つ変わっていないのに、『中国産』に変わった途端、売れ残るのはおかしな話」とし、POPに「中国産なめんなよ」と赤字で強調(写真)。おいしい貝として正当な評価を、店頭で説明、販売している。

[MSC認証取得も]ニチレイフレッシュ

 ニチレイフレッシュは2006年から中国産アサリを同社のこだわり商材として取り扱っているが、11年からは世界自然保護基金(WWF)と中国・鴨緑江河口域でのアサリについて情報交換をしながら、現地生産者のMSC認証取得に向けて16年には漁業改善プロジェクトを開始。21年9月に中国では初の認証を取得している。

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