Vol.120  魚はもっと語ることがある/ととけん

【第9~11回】ととけん受検者の印象に残った1級問題

 昨年11月に開催された日本さかな検定(愛称ととけん)の1級に、水産庁の山口英彰長官が合格! このニュースに1級受検経験者は驚き、山口長官にさらなる敬意を払ったに違いない。それほど1級合格には幅広い知識が求められる。では誰が、どんな思いで問題を作っているのか。一般社団法人日本さかな検定協会の尾山雅一代表理事を訪ねた。

ととけん問題制作の真実

「取材で得た感動を問題のテーマにしている」と語る尾山代表

 ととけんは出題レベルに合わせ3級(初級)、2級(中級)、1級(上級)があり、マークシートの四者択一方式で100問(試験時間70分)が出題される。これまでに11回開催され、単純計算で3000問以上もの問題が出されたが、同じものは一つもない。

 問題の約7割を作る尾山代表は、広告会社の役員を務める傍ら、週末は全国各地へ取材に飛び回る。魚は捌けない。食べるのが専門で「だからこそ消費者の代表」と語る。「例えば『フグ』というテーマ一つとっても、関連する情報は豊富にあり、問題作りが尽きることはない」そうだ。

 この思いとは裏腹に、「世間には魚をめぐる話題が少ない」との思いが募る。取材を通じて感じるのは、「魚のことを上手に語れる人が案外少ない」。例えば慣れ親しんだ地方名だけでなく、標準和名を答えられないなど、その道の達人でも、本業からわずかにそれただけで、とたんに“普通の人”になってしまう。

魚を話すきっかけに

本コーナーで紹介した写真が問題に採用されたことも

 一方、居酒屋のカウンター越しに「この魚にはこんな特徴があり、今が旬で、こう料理するとおいしい」と教えてもらうと、愛着が湧き、より味わえたという経験はないだろうか。種類が多く、季節や産地、処理方法が味を左右するからこそ、「魚は肉や野菜に比べうんちくで価値を上げることができ、好意をもってもらえるツールになる」と、尾山代表は考える。

 そのため問題の制作には、「日常的に魚を語るきっかけにしてほしい」との思いを込める。出題される問題は長文が多く、解答の解説集はさらに豊富な情報を盛り込む。問題を解き、答え合わせをする過程で新しい話題に触れられる仕掛けだ。「誰かに話したい」との気持ちがこみ上げ、ふとした場面で問題の出所と遭遇すれば、思わず声量を上げてしまう。

 受検者へのインタビュー取材を通じて、「お客さまに正確な情報を伝えたい」という、飲食や販売に関わる人に出会うことも少なくない。中には「魚を伝えられる“おしゃべり”になってほしい」と、社員に受検を促す会社もあるそうだ。

魚の価値はまだ上がる

 1級受検には2級を保持していることが前提にあり、それでも合格率は10%前後の難関だ。

 尾山代表は「1~3級で問題の難易度を分けていない」と話す。文化や環境など出題範囲や解答の選択肢の難易度で調整していて、「本来は1級も3割程度の合格者を出したかった」と反省。だがこの狭き門こそが、合格者の自信につながる。

 ならば、魚に関する興味と知識に満ちた1級保持者には「学校や職場で魚のことを話して、周囲の人のマインドシェアを高めてほしい」と願う。魚にまつわる物語は出尽くしていない。「安い、うまい」だけで魚の魅力を語り終えてはもったいない。楽しみ方を広く共有することで、「もっと魚の価値が付いてもいいはず」と、伝道師としての活躍を期待する。

間もなく公開レシピ冊子

レシピ冊子の完成イメージ

 日本さかな検定協会は大日本水産会魚食普及推進センターと共同し、季節でお勧めの魚介30種を紹介する冊子を作成している。

 ととけん史上最年少で1級に合格したおさかなキッズ・伊藤柚貴くんのイラストと、料理研究家が開発したレシピをセットにして、魚の魅力を発信。2月末以降に魚食普及推進センターのホームページで掲載を予定している。

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