【ととけん】2023年5月問題
Q1. 初物が好きな江戸っ子が珍重したこの魚ですが、ご祝儀相場で庶民にはとても手が出ない高価なものでした。当時は辛子とともに食べるのが主流だった、下線部に入る魚を選びなさい。初_ 銭と辛子で 二度涙
[2021年(第12回)3級(初級)から]
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【解答】②鰹(かつお)
【解説】「初鰹 銭と辛子で 二度涙」江戸時代の川柳には、庶民の暮らしぶりが詠まれたものが数多くある。大枚をはたいてでも食べたい初鰹ながら懐には痛く、辛子の刺激とあいまって涙をする江戸っ子の様子が手にとるようにわかる。江戸時代の中ごろに活躍した俳人・山口素堂が「目には青葉 山郭公 初鰹」と詠んだころから、江戸の町では「初鰹」を食べる“初物食い”が一大ブームになっていた。カツオはサバ科の回遊魚で、初夏に北上して関東近県に近づくため、その好機をのがすまいと、一尾で2~3両(現在の価格で12万~18万円くらい:江戸中期の1両は6万円)の値段でも取引されたとか。その背景には、「初物を食べると七十五日長生きする」という季節の食の大切さを教えることわざや、武家社会の江戸はカツオが「勝男」として武運長久に通じると、その語呂や逸話による縁起を好んだからとされる。初夏のカツオは“上り鰹”ともいわれ、秋の“下り(戻り)鰹”にくらべて脂ののりもしつこくなく、栄養も豊富な魚。季節を先取りしながら、長寿を願う人々は、芥子酢などをつけて初夏のカツオをたのしんだ。
Q2. 日本とロシア間の「サケ・マス」漁業交渉で、主要対象魚となる“トキシラズ”の漁獲時期を選びなさい。[2022年(第13回)2級(中級)から]
①春から初夏
②梅雨どきから晩夏
③秋から冬
④通年
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【解答】①春から初夏
【解説】サケやマスは、生まれた川がある国に帰属するとの考え方に基づき、日本の200カイリ内であっても、操業するには政府間の合意が必要。漁業者は漁獲実績に応じて漁業協力費をロシア側に支払う仕組みで、例年3~4月に交渉が行われ、4月10日に漁が解禁され初夏まで続く。「時不知」と書くトキシラズ、漁師たちは「時鮭」とか「トキ」と呼ぶ。春から初夏にかけて、北海道の沿岸で時々獲れる若いシロザケ。本来なら秋に獲れるはずのシロザケが、ちょっと早めにとれるから「ときしらず」。実は、彼らの生まれは日本ではなくロシア。オホーツク海に注ぐアムール川や、カムチャッカ半島西海岸の川に戻る途中の鮭なので、卵巣や精巣が未成熟。その身肉には、体内のすべての脂肪分が含まれている状態ゆえに、うまいのだ。そして、高い、お値段も。
Q3. スペインのシーフードレストランやバルに「ペルセベス」というメニューがあります。異国の響きに惹かれて、薦められるままに頼んでみると、衝撃的な皿が運ばれてきます。皿の上で山盛りになっているのは、親指大ほどの黒いゴム管からニョキッと太い爪がむき出している奇怪な物体。ペルセベスの正体を選びなさい。
[2021年(第12回)1級(上級)から]
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【解答】②カメノテ
【解説】ひるまずに落ち着いて一個一個をよく見ると、亀の手のようだと思える。そう、日本語名カメノテという。日本でも食べられるが、基本的には限られる地域ならではの珍味である。江戸時代には貝の仲間だと思われていたというカメノテは、滋養強壮によいとして食べられてきた。カメノテを食べる地域では春の磯遊びなどでとり、定番はみそ汁、エビのような風味の濃厚な味になる。ほかに、日本酒で酒蒸しにしたり塩ゆでにする。食文化のある地方では、カメノテのことをセイと呼ぶことが多い。硬い殻で覆われているので貝のようだが貝ではなく、エビやカニと同じ甲殻類。さらに言えばあのフジツボの仲間である。フジツボと同様、カメノテも岩と岩の隙間にびっしりと張り付いている。ヨーロッパでは高級食材として知られている。エビやカニの仲間だからスープにするといいだしが出るし、そのまま食べてもおいしい。ただ問題は、いびつな形のこのカメノテをどこからどうやって食べるのかだ。実は意外に簡単で、まず蛇腹のように張り付いているゴム管のような黒くて硬い皮を回しながら外す。そうするだけで淡いピンク色の身がチュルッと出てくるので、かぶりつけばいい。海の幸特有の塩っぽさ、そしてエビやカニと同じような独特の甘さが口の中いっぱいに広がる。
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