Vol.16  魚のDHA/EPA、機能性が最高評価

 消費者庁は4月25日、昨年度に実施した「食品の機能性評価モデル事業」の結果を公表した。「コエンザイムQ10」「ヒアルロン酸」といった、すでに評価の高い健康機能性成分11種について、科学的根拠をもとに機能性を評価したもの。この中で、「魚=健康食」の印象を決定付けた「DHA」「EPA」などn?3系脂肪酸(オメガ3)が、唯一の最高ランクA評価を得ており、食品業界を飛び越え、医学界でもホットな話題となっている。

成分の機能性評価結果

  • 成 分 機 能 総合評価
    n?3系脂肪酸
    (オメガ3)
    心血管疾患リスク低減(EPA/DHA) A
    血中中性脂肪低下作用(EPA/DHA) A
    血圧改善作用(EPA/DHA) C
    関節リウマチ症状緩和(EPA/DHA) A
    乳児の成育、行動・視覚発達補助(EPA/DHA) B
    うつ症状の緩和と発生率低下(EPA/DHA) C
    心血管疾患リスク低減(αリノレン酸) B
  • 消費者庁「食品の機能性評価モデル事業」の結果報告から作成

 

 6段階評価(A=機能性について明確で十分な根拠がある、B=機能性について肯定的な根拠がある、C=機能性について示唆的な根拠がある、D=機能性について示唆的な根拠が少数ながら存在するが不十分、E=ヒトでの効果確認例がなく、根拠レベルの評価不能、F=機能性について否定的な根拠がある。あるいは、根拠情報とみなせるものがほとんどない)(評価A?C:対象が日本人で肯定的結果があり、作用機序が明確に説明できるもの)

医学現場で注目

イワシには豊富なEPAが含まれている(写真はイワシのつみれ汁)

 魚食大国として日本は、早くから魚の機能性について研究が進められてきた。中でもDHA/EPAは、動脈硬化の予防など諸効果が発表されており、今回の事業結果が、“特筆すべき機能成分”との裏付けを強調した形だ。東京海洋大学の矢澤一良特任教授は、「神経系、循環器系、炎症系について、ほかの成分と比較しても、効用効果は高い」と評価する。

 米国を筆頭に海外では健康や美容効果の点からも、魚・サプリメントの消費が伸びている。日本ではどうか。DHA/EPA市場は成熟しているとの見方はあるが、昨今の健康・美容ブームにこの結果を加味すれば、市場再沸の可能性は高い。  魚の機能性については現在、サプリメント関連からの発信が先行している。だが、日本には「魚を食べると頭がよくなる?♪」の歌などが、広く国民への周知を成し遂げた土壌があり、これを逃す手はない。加工・販売サイドが水産物の機能性について、認識を新たにすれば、消費者への販促ツールとなり得るのではないだろうか。

[日本水産] EPAの機能性の高さをよりアピール

 EPAの分野においては世界でもパイオニアの存在である日本水産は、疫学調査が行われた1960年代の結果に早くから注目し、大学の医学部や製薬会社との共同研究を行ってきた。高濃度のEPAを抽出、精製することに成功した同社は、医薬品の原料として、また、健康食品として取り組みを拡大してきたが、今後さらに増えると予想される心血管系疾患を予防するためにも、よりEPAを摂取しやすいサプリメントや飲料の開発を早くから進めている。

 今後は水産売場でもパネルなどを使ってEPAそのものの機能性の高さをアピールしていく。

[マルハニチロHD] トクホ表示などでDHAの情報発信

マグロにはEPAやDHAが豊富。食べて健康を意識する消費者も増えている

 マルハニチロホールディングス(HD)はDHAが中枢神経系の機能に大きな役割を果たしているのではないかと考え、世界に先駆けてラットを用いた学習試験に着手し、1988年に結果を公表した。  同社としては、乳幼児や若者、働き盛り、高齢者などライフステージによりDHAの機能性が区分されることから、トクホ表示などを通じて情報発信を行っていきたいとしている。

 また、魚がもつさまざまな栄養素の紹介や魚の加工品(魚肉ソーセージ、缶詰)の簡単クッキングといった食育イベントの開催など、今後も消費者に対し、水産の機能性の高さをアピールしていく。

[オルニチン] 肝機能に高い効果、疲労回復やストレスにも

 シジミに最も多く含まれその機能性が注目されているオルニチン。アミノ酸の一種で、肝機能の働きを助け、疲労回復やストレス軽減、美肌効果などがあると、ここ数年の間にオルニチンを加えた商品が急増している。

 オルニチン研究会で最近、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の進行を抑制する新たな効果も発表されたほか、アンモニアの分解を促進し、“疲労臭”の軽減効果があると、昨年、実験結果が発表されたばかり。1日当たり400?から800?のオルニチンを摂取することで、これらの効果がみられるとのこと。

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