Vol.103  食の革命なるか?スシ・シンギュラリティ

寿司シンギュラリティ東京」の構想図

 日本の一流寿司職人が握る寿司を、遠く離れた異国で瞬時に食べられる!? 昨年、このうぉーく(2018年7月30日付)で紹介した“すしテレポーテーション(転送すし)”構想がさらに進化していた。寿司屋のエンターテインメント性を生かしつつ、食のデータベース化とインターネットをつなげ世界中で共有すること。そして個々のヘルスデータに基づき最適化された食の提供など、魚食文化をも大きく変えるかもしれない「食の革命」について追跡取材した。

ヘルスデータによる最適化の寿司

「100年先には宇宙人と名店の寿司を」とオープンミールズデモ装置の前で榊さん

 世界中のあらゆるジャンルのベンチャー企業が新しいテクノロジーを発表する場となっている米国テキサス州で開かれたSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)展示会で昨年発表された“すしテレポーテーション”に世界が驚愕(がく)した。そして今年の展示会では「SUSHI SINGULARITY(スシ・シンギュラリティ)」が、昨年の驚愕をさらに超えるものとなったようだ。

 「Open Meals(オープンミールズ)プロジェクト」発案者であり電通でアートディレクターとして活躍する榊良祐氏は、「昨年は、3Dプリンターで作った寿司(食)のデータを元に、違う場所でも再現できるという構想を発表したが、今回は違う。寿司が世界中の人とつながり、オンライン上で生成、編集、共有され、新しい寿司が次々に誕生する。そして寿司が人の体とつながり、バイタルや遺伝子などのヘルスデータに基づいて栄養素の個人最適化が実現する可能性を示せたと思う。オープンミールズもヘルステックや総合栄養ベンチャーなど新たな分野と連携し、さらに進化している」と話す。

個人のデータを事前に登録して栄養素を最適化した寿司を提案

 「シンギュラリティ」とあまり聞きなれない言葉はコンピューターが人の知能や技術を超えて圧倒的に進化することを意味するそう。

 「食とITが融合するフードテックは畜肉の業界では急激に伸長している。つまりCO2削減や廃棄ロス削減など環境にやさしくサステイナブルな人工肉、培養肉の開発を競って進めている状況で、人にとって安心やコスト面などがクリアされれば、商品化も近いし、魚も近い将来そうなると思う。来年オープンを目標としている『寿司シンギュラリティ東京』はあらゆるフードテックの技術を結集した超未来体験型レストランという位置付けだ」という。

上段左から「粉末焼結雲丹」「細胞培養マグロ」「オーゼティックかっぱ巻き」「ネガティブスティフネスハニカム蛸」。下段左から「イカ城」「マイクロピラー穴子」「アニソロピックスティフネス蒸し海老」「出汁スープユニバース」

 例えばそこで提供される3センチ角のマグロを模したキューブは、マグロから培養し、栄養素や味、食感、香りなどを再現。個人のヘルスデータを元に作るので、その人に足りない栄養素などを付加して生成され適した状態で提供される。

 榊さんの100年構想の中の2100年には、宇宙で銀座名店の寿司を宇宙人と食べるという、ちょっとぶっ飛んだ構想になっている。そこまで生きてはいないので確認できないが、水産業界にも食のパーソナライズやフードテックといった動きに何かヒントがありそうだ。

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