Vol.9  電子レンジで簡単に加熱調理、包材メーカーの技術開発

 今や一般家庭に欠かせない電子レンジ。水産加工メーカーでも、電子レンジ対応の商品開発が進んでいる。だが、単なる温め直す道具として電子レンジを使うのではなく、加熱しながら調理することで、作りたての料理を手軽に提供する調理器具とはならないか。とらえ方次第では、魚料理がより身近なものになるかもしれない。そんな電子レンジ対応包材を手掛けるメーカーの取り組みから、魚食の今後を眺めてみた。

大日本印刷

電子レンジ用スタンドパウチ

 早くから多機能な包材を手掛け、食品用電子レンジ包材の開発にも着手してきた最大手の大日本印刷は、業界のパイオニアでもある。ノンアルミ包材の電子レンジ対応製品の開発を行ってきたが、なじみの食品でいえば、レトルトカレーやエビシューマイのような冷凍食品など、主に市販用食品向けに幅広く対応した製品を出している。

 同社の電子レンジ用レトルトパウチには大きく分けて、レトルト向けと冷凍向けの2種類があるが、レトルト用では、電子レンジ加熱で発生する蒸気の熱と圧力により、特殊シール形状が後退し、自動的に蒸気が放出され加熱調理されるという自動蒸通パウチがある。

 蒸気をうまく放出するための特殊なウィングをもつ平置き型やスタンド型があるが、冷凍向けボイル用にも2種類ある。さらに最近では、個食タイプの冷食需要が増えていることから、業界でも難しいとされるピロー包装機向け自動蒸通パウチの開発にも成功している。

水産分野の可能性大、安心・安全を第一に

出来たての煮魚を電子レンジで

 水産関連製品については現在のところまだ需要は少ないものの、「例えば、つみれのような定量品であれば、ある程度熱を加えた時の加熱状態なども分かりやすいし、商品化の可能性が広がるのでは」(鈴木恭介開発部製品開発部部長)と、水産分野への可能性を示唆する。製品化に至るまでには、食品メーカーとの細かな打ち合わせや試験を繰り返すが、実際に水産会社との共同研究開発の事例はいくつもあるようだ。

 「信頼のある製品を提供しているということでは、業界でも定評があると思うが、あくまでも安全・安心な食品を提供するための包材であることがいちばん」(椎名徳之グループリーダー)。

 電子レンジ対応と表記されていても湯煎で利用する人が多いとも言われるが、電子レンジを単なる温めの装置というだけではなく、調理を助ける一つの道具という概念が定着すれば、魚の消費もまだ増える可能性はありそうだ。

メイワパックス

 食品をはじめとした各種包装材料の製造・販売を手掛ける?メイワパックス(大阪府柏原市、増田淳代表取締役社長)では、約15年前から「レンジでポン」というブランドで、各種電子レンジ対応袋・パウチを販売している。  特殊蒸気口を設け、袋のままでも破裂させずにレンジアップできる点、電子レンジ調理のメリットでもある栄養を逃しにくい点など、多忙な現代人の時短志向や健康志向、さらに核家族化や単身者の増加などで少量多品種の食品を加熱したいといった消費者ニーズに応えようと、多くの食品メーカーが同社の製品を採用してきた。

 現在、おでんやカレー、ウナギ蒲焼、冷凍食品など幅広い食品で活用がなされてきている。

次世代型の袋・パウチ、100度C以上の高温加熱

 こうした中、メイワパックスでは従来品の特殊蒸気口の機能をさらに改良、発生した蒸気を極力逃さず、袋内を高温・高圧に保つことで、加熱ムラなどを極めて少なくする調理が可能な、いわば次世代型の電子レンジ対応袋・パウチを開発した。

       加熱前                 加熱中                 加熱後

従来の加熱よりもジューシーな食感

 バジル風味の調味液とともに袋に密封された生のサケは、レンジアップすると袋がパンパンに膨張。特殊開発された蒸気口からは蒸気がわずかに抜けて、袋の破裂を防ぐ。電子レンジによるマイクロ波と、蒸気による高温・高圧下で生のサケはムラなく加熱調理される。 このため、従来の加熱調理済み品の再加熱に比べてジューシーで、ふっくらとした食感の味わいが楽しめる。これまでの試験から魚介類は水分量が多いため、特に高い効果が得られるとしている。

 同社では要望のある会社などとタイアップし、年内にテスト販売を開始、全国への販売を進めていく。

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