Vol.109  ニタリクジラを食べる

クジラを食べよう

 昨年7月に日本沿岸と排他的経済水域(EEZ)内で鯨種を限定した商業捕鯨が再開し、ニタリクジラをはじめ、ミンククジラ、イワシクジラが国の資源管理のもと捕獲されている。今月のうぉーくでは、最も供給量が多いニタリクジラにスポットを当て、東京・築地でクジラ専門店「鯨の登美粋」の松本宏一代表に調理のコツなどを聞いた。

商業捕鯨再開で注目鯨種

松本代表に聞いた

 ニタリクジラは日本が捕獲している鯨種の中でもクジラらしい味わいのある鯨種で若干好みが分かれるものでもある。酸化が進むとクジラ特有のにおいと酸味が出るが、きちんとした下処理ができていれば問題はない。松本代表は「数年前に出回ったニタリと今回商業捕鯨で獲られたものは全く別物と思った方がいい。選別や衛生面への配慮、肉質などかなり向上していると感じる。品質は抜群によく、生産現場の努力の程がうかがえる」と太鼓判を押した。赤身とサエズリ、尾身が特に評価が高い。

 ニタリは日本のEEZ内の沖合域で捕獲しているが、母船式の船上で水揚げ後、すぐに凍結されるので空気に触れる時間も短く質のいい状態で出荷が可能。特に今回はオキアミを主食としたニタリだったので非常にやさしい味わいの肉との呼び声も高い。

 ニタリの調理に関しては「ミンクなどのほかの鯨種と基本は同じ。赤肉は低温でじっくり解凍すること。また筋切りを丁寧に行うことで軟らかさが増す。ただニタリは酸化すると酸味が出てくるので、真空状態で解凍し、早めに食べることがポイント」という。同店では酸化しないよう全鯨種を少量の真空パックで販売しており、その方法を勧めている。

 また「解凍方法などおいしく食べる方法をもっと広めていく必要がある。おいしくなければ二度と食べてもらえなくなる。特に新しい食材ともいえる鯨肉は最初のひと口が今後の消費を左右する」と提供側のあり方も提案する。さらに「産地や海域などの表示をしっかり行い、消費者に説明がきちんとできるような環境をつくっていく必要があると思う。適正価格でお客さまが満足できるおいしいものを提供する努力はしていかなくては」と話した。

クジラは外国人にも人気

脂乗りも最高の尾の身

 クジラ料理が食べられる国は日本やノルウェーなど限定的なため「日本に旅行したらクジラ料理を食べてみたい」という外国人観光客は実に多い。取材中にもクジラ料理を求めてカリブ海の島国から訪問客があった。交流サイト(SNS)で得た情報をもとにはるばる訪ねてくる人が多く、クジラの希少性とポテンシャルの高さはやり方次第で、観光業や地域経済活性化のカギになるだろう。

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