Vol.91  「日本一魚をさばける」料理教室

三枚おろしの手本を見せる

三枚おろしの手本を見せる

 人気料理研究家の高橋善郎氏は7月24日、総合刃物メーカー・貝印(株)の本社1階KaiHouseで、小学校低学年を対象とした包丁教室「貝印1day包丁レッスン」を開いた。高橋氏は「日本一魚をさばける料理教室」を主宰している。「日本一魚をさばける」とは一体どういう意味か。実際に話を聞いた。

料理研究家・高橋善郎氏が主宰

冗談を交えながらテンポよく教える

冗談を交えながらテンポよく教える

 高橋氏が講師を務める「日本一魚をさばける料理教室Family」は、3時間で10尾以上の魚を捌くことを課している。基本の手順を教えると、あとは次々に魚と格闘。短時間のうちに数をこなすことで向上心が途切れず、自らが納得するコツを探り当て、帰宅しても必ず再現できるようにするのが教室の目的だ。

 捌ける人はしたり顔で「数をこなせば自然に覚える」と言うが、それを集中的に実践する。スパルタ教育のようで理にかなった内容だ。

 10尾も練習すると飽きが起きそうだが、高橋氏のハキハキとしたよどみのない口調は、教室をテンポよく進めているように思える。参加者には30代前半から40代後半の女性のほか、釣りを趣味としている男性もいるという。

 初心者に魚を捌かせるならば、サバを勧めるそうだ。イワシやアジよりも大きいので包丁の刃が骨に当たる時の感覚がよく伝わり、魚の体の構造が分かりやすい。「胃袋を破ると血が出るし、包丁の切れ味や使い方が身質に顕著に出る」と語る。一度魚を捌く“仕組み”が分かれば、どの魚も“応用”で対処できる。

デモンストレーションで捌いたアジ

デモンストレーションで捌いたアジ

 家で魚を捌くことについてはデメリットも挙げる。「スーパーマーケットで処理してもらえるこの時代に、家で捌くのは手間になり、ゴミが増えるなどの問題はある」という点だ。もちろん、自分で捌くと「あらまで使えるので料理の幅が広がる。丸魚で買った方がサクよりも安いし経済的」とメリットが勝ることを強調する。

 日本料理のコースのメインは魚であり、調理を通じて日本の食文化を知ることにもつながる。知見も広げてくれる。「知らなくても損はしないが、人生を豊かにしてくれる」と魅力を語った。
 ただし、現在は料理する機会を増やすことから始めなくてはいけない。大人には主宰する料理教室だけでなく、「子供と料理することで、楽しさも感じてもらえる」と親子向けの料理教室に参加する意義を唱えた。

“できた”喜びを食卓

三枚おろしに奮闘する小学生にコツを教える高橋氏

三枚おろしに奮闘する小学生にコツを教える高橋氏

 この日の料理教室に参加したのは小学2年生から4年生の15人。高橋氏は登場するやいなや軽やかな足取りで子供たちとハイタッチ。賑やかな雰囲気で始まった。

 まずは子供たちの前でアジの三枚おろしの手本を見せる。時折冗談を交えながら、捌く手順や魚の部位の特徴を説明。高橋氏の手元には、子供たちの視線が集中する。捌き終えて部位ごとに並べられたアジを見た子供から、「標本みたい」と歓喜の声が上がった。

 手本に従い、子供たちが実際に三枚おろしに挑戦。小学校低学年の参加者は、包丁を扱うこと自体初めての子も多い。高橋氏が一人ひとりに直接声掛けをすることで、15人全員が三枚おろしに成功した。

 参加した小学4年生の女の子は「楽しかった。家に帰っても捌いてみたい」と満足げに感想を述べた。

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