<魚食にっぽん>現場で学び、知って食べる 食体験から消費拡大 vol.183
漁業への関心を高め、魚食を普及させる方策の一つに、産地での見学や体験がある。海離れが叫ばれる近年において、誰が、どうやって、どんな思いでこの製品を生産しているのか。関係者の話を聞きながら、現地で五感を通じて学ぶことにより、価格に偏重されないファンをつくりたい。実際の活動に同行した。

全自動ノリ乾燥機の説明を受ける一行 千葉・木更津市のJF金田漁協は、東京湾アクアライン(東京湾横断道路)などの整備により、首都圏からもアクセスしやすい。金田地区といえば、ノリ養殖で名高い。広大な盤州干潟と、そこに差し込む小櫃川の栄養分に育まれた、「色よし・味よし・香りよし」と評される「江戸前ちば海苔」の主要産地だ。
とはいえ野菜やコメなどとは異なり、養殖は海上で行われる。普段食べているノリはどのように生産されるのか。加工も含めイメージがしにくい。

漁協が運営する金田みたて海岸(潮干狩り場)からはノリの支柱柵も見える 3月20日に同漁協は、東京・荒川区の子ども村中高生ホッとステーションに通う児童・生徒15人らを、併設するノリ加工施設で迎えた。
場内には生産者の収穫した生ノリが、撹拌(かくはん)機に持ち込まれていた。子供たちが生ノリを見るのは初めてだという。異物を除去し、細かく裁断したあとに定量を四角い形に抄(す)いて厚さを調整、全自動ノリ乾燥機で乾ノリにする。

金田地区のノリの特徴を説明する谷萩施設長 谷萩旭施設長は、さっと炙(あぶ)ったノリを子供たちに配った。黒くて鮮やか、口に入れるとパリッとして上品な磯の香りが広がり、少しずつ溶けていく。「今まで食べていたノリとは全然違う」と漏らした一行の言葉を受け、「この辺りの海は特に栄養塩が多い。これがノリ本来の味だ」と胸を張った。
一方で海洋環境は厳しさを増す。東京湾は海水温上昇の影響に加え、分布域を拡大した植食性生物の被害に悩まされる。

出来上がった板ノリを10枚ずつ重ねて折り、結束する工程をひたすら見続ける子供もいた 加えて栄養塩類が不足した地域では、ノリの成長が遅いうえ黒色が薄くなる色落ちも深刻だ。谷萩施設長は「コンビニおにぎりのノリは、味付けが増えている。色落ちで味も薄くなっているためだ」と伝えた。結果として製品価格が高騰し、ノリのないおにぎりや軍艦巻きが売られるようになった。
金田漁協は今期、ノリの種付けが順調だったうえ、水温も適正で成長がよい。「千葉のノリを食べたらきょうのことを思い出して。うまさが倍になるから」と呼び掛けた。
事業を通じて産地体験にも関心を寄せた。JF全漁連に相談して、浜の活力再生プランに食育活動「子供や若い世代を中心にノリ養殖への理解と促進」を掲げる、金田漁協とマッチングした。
SFAの国友千鶴アドバイザーによると、子供たちは当日を境にノリへの見方が変わったという。施設へ行く前に、金田みたて海岸で潮干狩りも体験。そこから見えた支柱柵を指し「あそこでノリを育てている」と説明した時に、「ノリは海藻なんだ」と知った子供もいた。
しかし、生産者の話も聞いて出来たてのノリを触り、香りと味を楽しむ。五感で得られる驚きと喜びを体験できたことで「『あの時のおいしかった物』と選ばれる基準になるのでは」と話す。
体験と食の融合を、国友アドバイザーは強く支持する。ただし生産者に負担を与え過ぎては、現地体験の持続性を保てない。「普段の仕事に少しだけお邪魔させてもらう。それだけでも子供たちの大きな財産になる」とし、さらなる消費拡大への可能性を示唆した。

とはいえ野菜やコメなどとは異なり、養殖は海上で行われる。普段食べているノリはどのように生産されるのか。加工も含めイメージがしにくい。

場内には生産者の収穫した生ノリが、撹拌(かくはん)機に持ち込まれていた。子供たちが生ノリを見るのは初めてだという。異物を除去し、細かく裁断したあとに定量を四角い形に抄(す)いて厚さを調整、全自動ノリ乾燥機で乾ノリにする。

一方で海洋環境は厳しさを増す。東京湾は海水温上昇の影響に加え、分布域を拡大した植食性生物の被害に悩まされる。

金田漁協は今期、ノリの種付けが順調だったうえ、水温も適正で成長がよい。「千葉のノリを食べたらきょうのことを思い出して。うまさが倍になるから」と呼び掛けた。
五感で得る驚きと喜び
今回の企画は、サスティナブルフードチェーン協議会(SFA)の協力により実現した。SFAは昨年度に農林水産省の補助事業を活用し、提供された低・未利用魚でホッとステーションに通う子供たちの成長を支援。魚を捌き、調理することで命の大切さも学んだ。事業を通じて産地体験にも関心を寄せた。JF全漁連に相談して、浜の活力再生プランに食育活動「子供や若い世代を中心にノリ養殖への理解と促進」を掲げる、金田漁協とマッチングした。
SFAの国友千鶴アドバイザーによると、子供たちは当日を境にノリへの見方が変わったという。施設へ行く前に、金田みたて海岸で潮干狩りも体験。そこから見えた支柱柵を指し「あそこでノリを育てている」と説明した時に、「ノリは海藻なんだ」と知った子供もいた。
しかし、生産者の話も聞いて出来たてのノリを触り、香りと味を楽しむ。五感で得られる驚きと喜びを体験できたことで「『あの時のおいしかった物』と選ばれる基準になるのでは」と話す。
体験と食の融合を、国友アドバイザーは強く支持する。ただし生産者に負担を与え過ぎては、現地体験の持続性を保てない。「普段の仕事に少しだけお邪魔させてもらう。それだけでも子供たちの大きな財産になる」とし、さらなる消費拡大への可能性を示唆した。
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