2026年2月27日(金)

<魚食にっぽん>キムチ化で磯資源を守る!? 厄介魚もおいしく消費 vol.172

2025年5月26日

 キムチ事業を展開する(株)Dプラン(内藤大輔社長)は、磯魚のブダイでキムチ干しを開発し、6月から販売を開始する。同社が製造・販売している“福耳キムチ”を横展開した「全国キムチ化計画」の一環だ。磯焼けの一因とされるブダイを、おいしく食べて数を減らし生態系を再生、地域に新たな産業を創出している。

開発した「ブダイのキムチ干し」
開発した「ブダイのキムチ干し」
 地球温暖化や黒潮流路の変動などで、ブダイは北へ北へと生息域を広げている。雑食性で旺盛な食欲は、体重の2割もの海藻を1日で消費するともいわれる。葉状部だけでなく茎まで食べ尽くされた海藻は、再び葉を伸ばせず消滅してしまう。そのため、海藻を餌とするアワビやサザエ、藻場に生息するイセエビが減少、産卵場を失った魚介類も数を減らしている。

 さらに厄介なのは、食文化のある地域が限られることだ。漁業者の網に掛かっても「売れないから」と放流されて、数を減らせない悪循環が生じる。漁業者が採捕したブダイを買い取り、生態系のバランスを保とうとする地域もある。

内藤社長(左)と妻で元料理人の加恵さん
内藤社長(左)と妻で元料理人の加恵さん
 地方創生に取り組む(株)micro developmentの企画で、内藤社長一家が静岡・伊豆の下田市を訪れた際、同県水産・海洋技術研究所伊豆分場の鈴木勇己主査から、ブダイの増加で伊豆の海の磯焼けが深刻化していると聞いた。懸命に採捕するが、独特な味とクセがあり食べ方に悩んでいるという。

 しかし、福耳キムチを監修する内藤加恵さんは、和食料理人だった経験から「当社の発酵キムチが解決できる」と直感した。特有な臭みを塩の浸透圧で抜き、そこへキムチ醤をベースにした漬けダレを染み込ませる。干しながら味が一体化させる過程で、発酵も進む。最後にもう一度タレを追加して「ブダイのキムチ干し」を完成させた。

ブダイは特有の前歯で岩に付着した藻類も削って食べる
ブダイは特有の前歯で岩に付着した藻類も削って食べる
 タレの味と乾燥、発酵でブダイのうま味を増やしつつ、特徴的なプリプリとした食感は生かす。口の中で魚の弾力を楽しむ間に、キムチとブダイの味が混ざり合う、相性のよさを実感した。

 研究所の採捕依頼で揚がったブダイを分けてもらい、下田市で漁業と干物加工も営む鮮魚店・泉魚店に協力を求めた。かつてはブダイを食べていた当地だが、多様な食品が流通されると見向きもされなくなった。だがDプランとの出合いで、「このブダイはおいしい」と商品化に賛同を得た。

日本の農山漁村を元気に

キムチ醤ベースのタレに漬け込む
キムチ醤ベースのタレに漬け込む
乾燥、再度タレを追加して完成
乾燥、再度タレを追加して完成
 同社は認知度が低く、規格外とされる食材に価値を創造する「全国キムチ化計画」を展開している。そのためのキーワードがキムチだ。中でも植物性乳酸菌を含む発酵キムチに注目する。世界五大健康食品にも選ばれており、ヨーグルトの動物性乳酸菌よりも丈夫で生きたまま腸に届く。善玉菌を活性化させる働きが抜きん出ているそうだ。

 これまでにも農家や畜産農家との協働で、オリジナルキムチを開発・販売してきた。「味と健康の側面だけでなく、経済も元気にしたい」との思いで、内藤加恵さんは課題をおいしく解決するレシピを提供している。

 水産物では初の試みとなったブダイのキムチ干しは、同社および泉魚店で販売する予定だ。「商品を通じて磯焼けの事実や伊豆を知ってもらいたい」と語る内藤社長。食という出口をつくったことで漁業対象種に格上げされれば、磯根資源の回復と併せ漁業振興につながる可能性もある。

 「新たな産業が創出されれば、移住という選択を考える人も出るかもしれない。“キムチ化”で地域を盛り上げていければ」と、意欲を示した。

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