2026年7月16日(木)

《無料公開中》<タコ博士水産奮闘記>5 季節違いで価値6倍

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キアンコウ(その1)

 下北の水産事務所に異動した22年前、知り合いの漁師から「野呂さん、春先にアンコウがたくさん網に入るが、値段がキロ当たり200~300円と二束三文だ。冬場になると1500~2000円で、大型になると一尾2万円にもなる。安いアンコウを獲るのは『もったいない』。何とかならないか」と相談を受けた。

 最初は下北のアンコウの種類が「キアンコウ」か「アンコウ」かも分からず、文献を調べても生態が全く不明であった。

 当時、知り合いの魚屋に、「何で夏のアンコウは安いのか」を聞いた。すると「野呂さん、アンコウの値段は肝(きも)、肝臓で決まるのよ。魚屋でアンコウを売っているのを見ると、腹を開いて裏返して売っていることが多いべ。これは、肝の具合を見せているのさ。こんな売り方をする魚はほかにはないな」「夏になると産卵期で肝が小さくなる」「アンコウは鍋料理の魚。夏になると熱い鍋料理からお客さんが離れていくのさ」。

 なるほど、説得力のある説明だった。それじゃあ、「肝臓が大きくなり、鍋料理が恋しくなる冬に獲りましょう」と夏に獲るのを控えて、値段の高くなる冬に獲るように方向を定め、キアンコウ研究がスタートした。ミズダコと同じように、標識放流を行い、放流したキアンコウの移動や成長を調べることにした。ところが、キアンコウの標識事例はほとんどなく、何事も初めてであった。

 写真は標識放流の作業風景。あちこちの漁協に、アンコウ指名手配のポスターも配った。その結果、ほとんどが放流近くで再捕されたが、遠くは福島県、千葉県まで移動していて驚いた。

放流個体と冬に再会

 さらにうれしいことに、春から夏の価格の安い時期に放流した個体が冬の高い時期に再捕された。当時の地元紙に「風間浦村蛇浦漁協の漁業者は2007年2月21日、自らが2005年6月に放流したキアンコウを捕まえ、1年8か月ぶりに“再会”」と、まるで日本昔話のような記事も掲載された。

 「値が付かないほど小さかった放流時に比べ、体長は2倍近い69センチ、体重は約5倍の5キロになっており、キロ当たり1200円で販売された。蛇浦沖では2月初めにも、2026年6月に放流した個体が再捕され、キロ当たり1500円の値が付いた」と。現在の風間浦村キアンコウ資源管理の重要な動機付けとなった。(つづく=随時掲載)
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