2026年7月7日(火)

<タコ博士水産奮闘記>4 タコ調査と下北のお母さんたち

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タコ(その2)

 ミズダコの調査、冬は大忙しだった。津軽海峡のミズダコの漁期は11~5月(現在は6月)で、毎月、日本海側の鯵ヶ沢町にある水産試験場(当時)から、公用車で片道4~5時間をかけて下北にある漁協を訪問した。

 1992年11月~97年5月の5年間、下北郡東通村、佐井村、風間浦村で、合計1098個体のミズダコの内臓を測定した。測定したミズダコの一個体当たりの体重は1・8~36・5キロで、平均7・6キロ、総重量は8330キロ、「8トン」だった。そして、なんと、測定時のタコは生きているのだ。8トンもの生きたミズダコをどうやって解剖し、解剖後の「身(足)」はどうしたの?と不思議に思うだろう。実は、現地にあるタコ加工場のお母さんたちの協力なくしてはできなかった。

 ミズダコの測定と解剖の手順を説明する。まず、漁協の荷受場に行き、活魚水槽に収容されている漁業者が獲ってきた、網袋に収容された生きたミズダコをカギで取り上げる。網袋のまま体重を測定し、油性インクでラボ用紙に記入し、個体識別用の番号札と一緒に網袋の中に入れる。

 タコは数百キロごとにタンクに収容され、落札した加工業者がトラックに乗せて加工場まで運搬し、私は車で後をついていく。加工場に到着すると、長靴とビニール前掛け姿で待ち構えていたお母さんたちが、気温が低い部屋で、手際よく解体を始める。

また道具だか?

 お母さんたちとは、何度も顔を合わせて顔見知りになり、「あれっ、お兄ちゃん、また道具の調査だか!」と言われるようになった。「道具」とは、下北地方のミズダコの内臓の呼び名だ。

 お母さんたちは、生きて暴れて動くタコを網袋から取り出し、素早く私に番号札と体重用紙を手渡す。タコの胴と腕の隙間によく切れる包丁を差し込んで、あっという間に胴部と内臓を切り出す。隣にいた私は、ビニール袋を広げ、お母さんから受け取った内臓を番号札と一緒にビニール袋に入れ、クーラーボックスに収納する。連係プレーだ。

 その後、「身(足と胴)」は、お母さんたちによってあっという間においしそうなゆでダコに加工される。翌日、水産試験場に戻り、墨まみれになって内臓を解剖し、精巣、卵巣の重量などを精密に測定する。

 このように、加工場のお母さんたちの協力、手際のよい包丁捌きなくしては、8トンのミズダコの測定はできなかった。

(つづく=随時掲載)
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