東日本大震災15年、支援細る中「共助」カギに 産業の弾力性確保に正念場
2026年3月11日




東北地方太平洋側の水産業に壊滅的被害をもたらした東日本大震災の発災からきょう11日で15年の節目を迎えた。近年は、新型コロナウイルス禍や海洋環境の激変に伴う天然資源の減少や養殖適地の変化、円安進行による輸入冷凍魚・資材の高騰など、目の前の経営課題への対応に忙殺され、震災の記憶は薄らいでいる。そんな中で、漁業者は漁獲減に悩む一方、産地加工会社は復旧・復興の過程で得た高い処理能力を持て余している感がある。公の支援が細っていく中で、今後は民間同士での「共助」の意識を醸成することがカギを握りそうだ。
5年に1度の調査が行われている「漁業センサス」の中で、震災前の2008年から5年刻みでの「冷凍・冷蔵工場数」「水産加工場数」の推移を「水産白書」の「水産物・国内消費仕向け量」と並べてみると、被災3県の推移が被災3県以外と比べてずいぶん異なる動きをしていることが分かる。
原料となる「水産物・国内消費仕向け量」が震災を挟んで15年間で7割に減る中、被災3県以外の「冷凍・冷蔵工場数」としてはほぼ比例する形で緩やかに減り、「水産加工場数」は原料以上に減少が加速している。一方で、被災3県は震災以後にともに7割に落ちているものの、「冷凍・冷蔵工場数」は一度増加に転じたあとに減少。「水産加工場数」はほぼ横ばい推移の傾向となっている。
行政の手厚い支援のもとで、震災で被災したハード面の整備が急ピッチで進んだことを数字が裏付けている。しかし、施設があっても原料がなければ経営はもたない。地域全体の将来像がはっきりとしないまま復旧・復興が急がれた結果、産地の受け入れ能力のベースとなる産地加工会社は「原料不足」に苦しむ構図が生まれた。そこに新型コロナウイルス禍と、気候変動による減産、もろもろのコスト高が重なり厳しさは増している。
もちろん苦しんでいる事業者ばかりでなく、さまざまな変化をチャンスととらえビジネスモデルの変革を図り、成功を収めている先進的な事業者は多くいる。一方で、淘(とう)汰されるのを待つような事業者もいるのは確かだ。行政は限られた予算の中、将来性の見込める事業者をより強くする方向に動き、業者間格差がさらに拡大している。
新たな政策課題が次々立ちはだかる中、今後は国からの震災に特化した大型支援は期待はできない。ただ、今の環境に強い漁業者や産地加工会社だけを残すだけでは、魚食文化の多様性は失われるうえ、今後に予想だにしない環境変化が押し寄せた際に乗り越えられるだけの対応力があった事業者をいつの間にか失っていた、ということになりかねない。産業としてのレジリエンス(弾力性)を備えておくことは必須だ。力を付けた事業者が「共助」の意識を発揮し、こぼれ落ちそうな事業者を結集して活動できれば、次世代に引き継ぐことは十分に実現可能だ。
すでに被災3県では本来考えられないライバル同士での連携や、ビジネス的には商売敵であったはずの漁業者と産地仲買人の間の協力体制がいくつも誕生し、そのもとでうまくビジネスが回っている事例が多く確認されている。今後も同様の輪が広がっていくことを願ってやまない。その時に震災を機に一新した施設・設備が力を発揮する。(八田大輔編集局長)
5年に1度の調査が行われている「漁業センサス」の中で、震災前の2008年から5年刻みでの「冷凍・冷蔵工場数」「水産加工場数」の推移を「水産白書」の「水産物・国内消費仕向け量」と並べてみると、被災3県の推移が被災3県以外と比べてずいぶん異なる動きをしていることが分かる。
原料となる「水産物・国内消費仕向け量」が震災を挟んで15年間で7割に減る中、被災3県以外の「冷凍・冷蔵工場数」としてはほぼ比例する形で緩やかに減り、「水産加工場数」は原料以上に減少が加速している。一方で、被災3県は震災以後にともに7割に落ちているものの、「冷凍・冷蔵工場数」は一度増加に転じたあとに減少。「水産加工場数」はほぼ横ばい推移の傾向となっている。
行政の手厚い支援のもとで、震災で被災したハード面の整備が急ピッチで進んだことを数字が裏付けている。しかし、施設があっても原料がなければ経営はもたない。地域全体の将来像がはっきりとしないまま復旧・復興が急がれた結果、産地の受け入れ能力のベースとなる産地加工会社は「原料不足」に苦しむ構図が生まれた。そこに新型コロナウイルス禍と、気候変動による減産、もろもろのコスト高が重なり厳しさは増している。
もちろん苦しんでいる事業者ばかりでなく、さまざまな変化をチャンスととらえビジネスモデルの変革を図り、成功を収めている先進的な事業者は多くいる。一方で、淘(とう)汰されるのを待つような事業者もいるのは確かだ。行政は限られた予算の中、将来性の見込める事業者をより強くする方向に動き、業者間格差がさらに拡大している。
多様性失われる危機
ただ、世界に誇る日本の魚食文化の魅力の本質は、多様性であったはずだ。それを支えていたのは、他者とは違う技術やこだわりをもった中小・零細の漁業者や産地加工会社の数の多さだった。直近の世の変化にうまく対応した会社ばかりが生き残り、より強くなるままに任せていては武器であった魚食文化の多様性は失われるばかりだ。新たな政策課題が次々立ちはだかる中、今後は国からの震災に特化した大型支援は期待はできない。ただ、今の環境に強い漁業者や産地加工会社だけを残すだけでは、魚食文化の多様性は失われるうえ、今後に予想だにしない環境変化が押し寄せた際に乗り越えられるだけの対応力があった事業者をいつの間にか失っていた、ということになりかねない。産業としてのレジリエンス(弾力性)を備えておくことは必須だ。力を付けた事業者が「共助」の意識を発揮し、こぼれ落ちそうな事業者を結集して活動できれば、次世代に引き継ぐことは十分に実現可能だ。
すでに被災3県では本来考えられないライバル同士での連携や、ビジネス的には商売敵であったはずの漁業者と産地仲買人の間の協力体制がいくつも誕生し、そのもとでうまくビジネスが回っている事例が多く確認されている。今後も同様の輪が広がっていくことを願ってやまない。その時に震災を機に一新した施設・設備が力を発揮する。(八田大輔編集局長)
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