<魚食にっぽん>「艶鰻」デビューへ 通年良品の活鰻供給が実現 vol.173
現在の養殖ウナギ業界で最もホットな話題といえば、高濃度大豆イソフラボン飼料を混ぜ合わせ一定期間投与することにより成鰻の身質を大きく改善させる生産技術、いわゆる“メスウナギ化”だ。発祥の地である愛知・西尾市の一色うなぎ漁協では現在、2024年1月に誕生した愛知県による大型メスウナギのブランド「葵うなぎ」に続き、組合独自の新ブランド「艶鰻(えんまん)」のデビューに向けた最終調整を進めている。「艶鰻」の魅力を石川晋治参事が語った。

メスウナギは身も皮も軟らかいサインの「青うなぎ」になりやすい(一色うなぎ漁協提供) ――“メスウナギ化”の動きは一色でどのように進んできたのですか。
石川参事 “メスウナギ化”が本格的に動き始めたのは2018年に生研支援センターの「イノベーション創出強化研究推進事業」で共同体「大型雌ウナギによる新規市場開拓コンソーシアム」が立ち上げられたのが最初だ。当時は極度のシラスウナギ不漁に見舞われていて、大きく育て1尾を2人でシェアするという目的意識が強かった。
養殖ウナギは普通に育てると9割以上がオスウナギ化する。メスウナギは数少なく幻のような存在だったが、オスに比べて体が大きく育って脂の乗りや身が軟らかいことで知られていた。室内水槽で始まった取り組みは3年目の21年には実証実験段階に移行。そこから組合が研究協力することになった。稚魚が一尾25グラム(40P)に育つ前に、最適な配合にした高濃度大豆イソフラボン飼料を2か月間与えるとほぼ100%“メスウナギ化”できることが分かり、22年の年明けには初出荷。その後一色地区の2つのウナギ問屋(三河淡水魚(株)と兼光淡水魚(株))系の養殖業者も加わり生産が拡大していった。

一色地区全体としての通年の良品安定供給に期待する石川参事 ――24年1月には、一尾333グラム(3P)以上を基準とする「葵うなぎ」がデビューします。
石川参事 大きく育てた資源を有効活用するという旗振りで事業を進めていたので、国内の活鰻マーケットでは現実には需要の少ないサイズで基準を設けられた。ただ生産に慣れると、メスウナギは別に大きく育てずとも従来の課題だった秋から春にかけての品質劣化(脂の乗りが落ちる、身が硬くなるなど)を起こさないと評価が高まっていたほか、ビリ(成長の遅いウナギ)を出しにくいことも分かってきた。
現在の流通の主体は以前に比べると大きくなったとはいえ250グラム(4P)中心。4Pでも使えるブランドがほしいという声が現場で強まった。県の事業が24年度で終了したことを受けて、コンソーシアムメンバーで「三河一色めすうなぎ研究会」を改めて組織。これまでのメスウナギ普及活動を引き継ぎながら、新ブランドの「艶鰻」を準備しているところだ。

「艶鰻」のロゴマーク。商標登録済み ――「艶鰻」は今秋のデビューと聞きました。
石川参事 指定メーカーの高濃度大豆イソフラボン飼料を使うのは「葵うなぎ」と同じで、生産者を組合員に限定してサイズ基準は設けない。今は雌雄判別の仕組みをどうするかなどで最終の詰めの作業を行っている。
一色地区は、単年養殖(養殖期間が半年~1年以内)組が育てた、若いウナギゆえに身が軟らかい「新仔うなぎ」がもともと定着しており、メスウナギは最初の成長速度が遅いため単年養殖組が“メスウナギ化”を導入する利点はあまりない。しかし、周年養殖(養殖期間が1年以上)組に導入が進めば秋から春の品質劣化が抑えられ、一色から良質な活ウナギが通年出せるようになる。
品質の底上げが相場で評価されて生産者に還元されるようになれば、今は稚魚1キロに対し15万円余分に必要とされる高濃度大豆イソフラボン飼料のコストから、全体の2割にとどまっている参入者がさらに増えることも期待できる。
シラスウナギの豊漁により今は大きく育てる意義が薄れているが、「葵うなぎ」も再び資源不安に直面した時にスポットが当たると考えている。

好評を博している「でしこ」 高濃度大豆イソフラボン飼料を活用した“メスウナギ化”は静岡・鹿児島でも急速に普及中だ。数々の取り組みの中でひときわ輝きを放っているのが、浜名湖養魚漁協のブランド「でしこ」だ。
デビュー直後に行ったクラウドファンディング(CF)サイト「Makuake(マクアケ)」の応援購入で、ウナギ関連では歴代1位の1530万円の資金を集め、「浜名湖ブランド」の強さを見せつけた。2年目は傘下27組合員のうち25組合員が何らかの形で“メスウナギ化”に挑戦する。国内の養鰻現場が今、大きく変貌を遂げつつある。

石川参事 “メスウナギ化”が本格的に動き始めたのは2018年に生研支援センターの「イノベーション創出強化研究推進事業」で共同体「大型雌ウナギによる新規市場開拓コンソーシアム」が立ち上げられたのが最初だ。当時は極度のシラスウナギ不漁に見舞われていて、大きく育て1尾を2人でシェアするという目的意識が強かった。
養殖ウナギは普通に育てると9割以上がオスウナギ化する。メスウナギは数少なく幻のような存在だったが、オスに比べて体が大きく育って脂の乗りや身が軟らかいことで知られていた。室内水槽で始まった取り組みは3年目の21年には実証実験段階に移行。そこから組合が研究協力することになった。稚魚が一尾25グラム(40P)に育つ前に、最適な配合にした高濃度大豆イソフラボン飼料を2か月間与えるとほぼ100%“メスウナギ化”できることが分かり、22年の年明けには初出荷。その後一色地区の2つのウナギ問屋(三河淡水魚(株)と兼光淡水魚(株))系の養殖業者も加わり生産が拡大していった。
葵うなぎは3P以上

石川参事 大きく育てた資源を有効活用するという旗振りで事業を進めていたので、国内の活鰻マーケットでは現実には需要の少ないサイズで基準を設けられた。ただ生産に慣れると、メスウナギは別に大きく育てずとも従来の課題だった秋から春にかけての品質劣化(脂の乗りが落ちる、身が硬くなるなど)を起こさないと評価が高まっていたほか、ビリ(成長の遅いウナギ)を出しにくいことも分かってきた。
現在の流通の主体は以前に比べると大きくなったとはいえ250グラム(4P)中心。4Pでも使えるブランドがほしいという声が現場で強まった。県の事業が24年度で終了したことを受けて、コンソーシアムメンバーで「三河一色めすうなぎ研究会」を改めて組織。これまでのメスウナギ普及活動を引き継ぎながら、新ブランドの「艶鰻」を準備しているところだ。
新仔と並行して供給

石川参事 指定メーカーの高濃度大豆イソフラボン飼料を使うのは「葵うなぎ」と同じで、生産者を組合員に限定してサイズ基準は設けない。今は雌雄判別の仕組みをどうするかなどで最終の詰めの作業を行っている。
一色地区は、単年養殖(養殖期間が半年~1年以内)組が育てた、若いウナギゆえに身が軟らかい「新仔うなぎ」がもともと定着しており、メスウナギは最初の成長速度が遅いため単年養殖組が“メスウナギ化”を導入する利点はあまりない。しかし、周年養殖(養殖期間が1年以上)組に導入が進めば秋から春の品質劣化が抑えられ、一色から良質な活ウナギが通年出せるようになる。
品質の底上げが相場で評価されて生産者に還元されるようになれば、今は稚魚1キロに対し15万円余分に必要とされる高濃度大豆イソフラボン飼料のコストから、全体の2割にとどまっている参入者がさらに増えることも期待できる。
シラスウナギの豊漁により今は大きく育てる意義が薄れているが、「葵うなぎ」も再び資源不安に直面した時にスポットが当たると考えている。
=浜名湖養魚漁協「でしこ」=
クラウドファンディングでウナギ歴代1位獲得

デビュー直後に行ったクラウドファンディング(CF)サイト「Makuake(マクアケ)」の応援購入で、ウナギ関連では歴代1位の1530万円の資金を集め、「浜名湖ブランド」の強さを見せつけた。2年目は傘下27組合員のうち25組合員が何らかの形で“メスウナギ化”に挑戦する。国内の養鰻現場が今、大きく変貌を遂げつつある。
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