太平洋クロマグロはえ縄IQ/配分不服、国に審査請求

2024年3月11日

 宮崎・日向市の近海マグロはえ縄漁業者、(有)とべしま丸水産(児玉才樹代表取締役)が太平洋クロマグロの個別漁獲割当(IQ)制度に基づく2024管理年度からの漁獲量配分の見直しを求めて、行政不服審査法に基づき農林水産大臣に審査請求する。不公平を解消する方法として、漁獲量を漁船隻数で単純に割る「均等割」を現在の30%より増加させることを求めている。
 同社はほかの漁業者の委任状も集めていて、委任状や賛同する陳述書を提出する漁業者も多数に上る見通し。
 審査請求書面によると、公的IQ開始年の22年分を含めて、はえ縄漁船向けの区分である「かつお・まぐろ漁業」では18~20年の漁獲実績が漁船ごとの漁獲量割当に反映されることが事前に公平に周知されていなかった。その実績がIQ算定に利用されることを予測していたかどうかにより漁獲量に大きな違いが生じた。
 当時は総枠自体も小さく、先獲り競争により漁を中止せざるを得ない漁場もあった。そのような「普通の1年間の漁獲とは異なる漁獲高」を基準に決められた割当量には「全く合理的な根拠はない」と批判した。割当が少ない漁船の資産価値は低下し、不公平な割当は「漁獲量の減少にとどまらない2次的損害を被らせる可能性が極めて高い」とも指摘している。
 太平洋クロマグロの漁獲可能量(TAC)のうち近海はえ縄漁業(かつお・まぐろ漁業)には24年度762・9トンが配分されている。割当を受けた231隻は仮にすべて均等割であれば0・4329%分(3・302トン)をもらえるはずだが、とべしま丸水産の所属船・第10とべしま丸の場合、0・2259%(1・723トン)にとどまっている。
 代理人弁護士によると、平均値以上の割当を受けている漁業者からも「不公平な割当が漁業者間の連帯を破壊している」とする声も上がっているという。
 行政不服審査法によると、行政庁の処分に不服を申し立てる(審査請求をする)ことができるのは処分を知った日の翌日から3か月以内。費用は無料。24年1月1日からの漁業者への割当量の通知は昨年12月15日付だった。3月15日までに申し立てを完了させる予定。
 22年から実施された「かつお・まぐろ漁業」の公的IQ管理は、18年から20年の漁獲実績を基に割合を算出し、漁獲可能量をそれぞれの漁船に割り当てた。24年からのIQでは、20~22年の3年分の実績を採用するところ、自主的なIQを試行した21年に自主的IQに参加しない漁船への漁獲量の著しい偏りが発生し、21年分の実績を除く、20年と22年の2年分を算定に使用することになった。審査請求はIQ実施の22年分の漁獲実績も18~20年の漁獲実績がベースになっているものとみなしている。
 「かつお・まぐろ漁業」のIQ配分をめぐっては、過去3年分の実績合計値から割合を算出するのは新規参入漁業者には不公平で違法・違憲だとする訴訟も起こされたが、裁判所は国の裁量を認めて、漁業者の訴えを退けている。[....]