<魚食にっぽん[148]>伝えたい 漁師のリアル

2023年5月29日

1月放送の新春5時間スペシャルのワンシーン。小田原のアブラボウズ漁で記録的大物をヒット(BS朝日提供)

 日常生活で交わる機会のない漁師という職業のリアルを伝えながら、魚食の魅力を余すところなく発信しているのが、(株)BS朝日で放送中のドキュメントバラエティー番組「魚が食べたい!~地魚さがして3000港~」(以下「魚が食べたい!」)だ。都合3度の単発での放送を経て、2020年10月にレギュラー化。4月末までに120回以上が放映されている。今では取材を待ち望む漁港があるほど業界内で注目を浴びている。同番組のチーフプロデューサーで、執行役員編成制作局担当局長の柴田聡氏に話を聞いた。

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 等身大の魚大好きディレクター9人が全国の漁港を突撃訪問し、地元漁師らとの出会いと交流を通じてお勧め地魚料理を味わう。築地魚河岸3代目の小川貢一さんと見合い結婚し魚に詳しい声優・平野文さんがナレーターを担当する現地の映像を見ながら、スタジオでタレントの山口智充さんが司会進行していく。「魚が食べたい!」は、そんなスタイルで人気を博している番組だ。

 「もともと番組を担当する制作スタッフが、漁師さんを訪ねて一緒に地魚を捕獲し、その魚料理をいただくというコンセプトを過去の番組で経験していた。漁師さんが登場する企画は当時から人気があったので自信はあったのだろうと思う」と経緯を話したのは、1年半前にチーフプロデューサーに就任した柴田氏。

 当時のノウハウとコネクションを基に、タレントではなく複数のディレクターが現地訪問する形にアレンジし、番組はスタート。滑り出しは順調だった。ただ、訪問前にある程度の魚種を決め打っていた制作スタイルは程なく行き詰まると考えた。[....]