揺らぐクロマグロ資源管理/「大間産」で不正、厳格化に課題

2022年2月2日

 高級な寿司種や刺身として人気が高い太平洋クロマグロの資源管理をめぐり、ブランド産地の青森・大間で不正行為が発覚、関係者の間で懸念が広がっている。放置すれば国際的な信頼をも揺るがしかねず、不正防止に向け、漁獲量や流通量の厳格な管理体制構築が課題となっている。

 水産庁はクロマグロの乱獲を防ぐため、国際合意に基づき小型魚(30キロ未満)と大型魚(30キロ以上)に分けて漁獲量の枠を設け、都道府県や漁法別に配分している。今年度の青森県の大型魚漁獲枠は543トン。漁業者に枠の順守を求めるとともに、漁獲実績の報告を義務付けている。

 しかし昨年11月、大間産クロマグロの今年度の漁獲量のうち10トン超が報告されずに県外へ流通していたことが判明。政府関係者は「不正は氷山の一角」としており、未報告が横行すれば漁獲枠を超過して水産資源管理が有名無実化しかねない状況だ。

 大間産は2019年に開かれた東京・豊洲市場の新春の初セリで一本3億円超えの高値を記録するなど、クロマグロの中でも最高級品とされる。ブランド価値の高さが不正につながったとみられるが、地元の漁業関係者は「正直者がばかをみる」と憤る。

 水産庁は違法な水産物を市場から締め出すため、品目ごとに漁獲番号を割り振って漁業者らに取引記録の保存を義務付ける制度を今年12月から始める。ただ、対象は密漁リスクの高いアワビなどに限る方針が示されており、クロマグロは対象外。現状ではクロマグロの正確な漁獲量や流通ルートの把握は難しく、漁業者任せの甘い管理を続ければ国際社会からの批判が高まるのは必至だ。

 水産物の資源管理に詳しい学習院大学の阪口功教授は「水揚げしたクロマグロにも漁獲番号を付け、(不正な商品を)購入した業者にも罰則を適用することが必要だ」と話している。[....]