<私と捕鯨・森下丈二①>「一度見ておけ」で30年

2023年3月7日

第回会合で議長を務める筆者(中央)

 日本は2019年に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、商業捕鯨を再開した。1982年にIWCが商業捕鯨モラトリアムを採択し、日本の捕鯨が一時停止を強いられてから、実に30年超の年月を経ての再開である。再開に至るまでの長い道のりに何が起きていたのか。90年代から国際交渉の場を中心に捕鯨問題に携わってきた森下丈二東京海洋大学教授(農林水産省顧問、元IWC日本政府代表)に、当時のエピソードを交え語ってもらった。

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 私の捕鯨問題との最初の出合いは、1992年に英国グラスゴーで開催された国際捕鯨委員会(IWC)第44回年次会合であった。水産庁に入庁したのが82年であったので、入庁10年目といった頃である。当時は水産庁国際課協定班の課長補佐だったが、捕鯨問題の担当ではなく、お手伝い要員としての年次会合への参加である。[....]