宮城ホヤ、売り時です!「五味併せもつスーパーフード」

2023年6月30日

さまざまな健康機能成分も含まれる

 宮城の夏を代表する珍味・ホヤ。特徴的な見た目や独特な風味、鮮度管理の難しさなどで全国的にはまだマイナーな食材だが、地元ではホヤのイベントに1万人以上が殺到するほど根強い人気を誇る食材だ。一度虜(とりこ)になるとほかでは味わえない風味や、多種多様に含まれる健康機能性の高い成分など、その魅力は底知れない。近年は流通時の管理手法改善により関東圏を含む遠隔地でも鮮度のよい生鮮品が食べられるようになっただけでなく、さまざまに開発された加工品でもそのおいしさを楽しめる。旬の時季を迎えた宮城ホヤのユニークな魅力と、多様な注目商品を紹介する。

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 ホヤは人間が味覚で感じられる5つの味「塩味」「甘み」「酸味」「苦味」「うま味」を併せもつ特異な食材。中でも後を引く甘みは、食べたあとに飲む水まで甘く感じさせるため「ホヤはどんな酒も銘酒に変える」ともいわれる。愛好家に酒好きが多いとされるのも無理からぬ話だ。

 豊富な栄養素も大きな魅力。必須ミネラルの亜鉛は100グラム当たり5・3ミリグラムと海産物の中でも随一の含有量を誇る。ほかにも鉄やビタミンB12、ビタミンE、グリコーゲン、さらには認知症予防に効果があるとされるプラズマローゲンなど、さまざまな健康機能成分を豊富に含み、まさに〝スーパーフード〟と呼べる食材だ。

 宮城県では夏の風物詩で、沿岸を中心に食文化が根付いている。また、東日本大震災以前は大消費国であった韓国向けに輸出する大半を県内で生産していたこともあり、年間約2万トンを生産する国内最大産地だった。しかし福島第一原発事故を受け、韓国が2013年に輸入禁止措置を発動。いまだ解除されない状況が続いており、生産量は徐々に減少している。現在は4分の1以下となり、21年の生産実績はわずか4355トンだった。それでも国内だけで消費するには「多すぎる」とされ、市場価格は右肩下がりに。約300グラムの大型も震災以前は一個100円だったが現在は80円程度となっている。

 そうした状況を受けて震災以降、官民を問わず国内の販路拡大に向けた取り組みが数多く行われてきた。九州や海外など遠隔地でのPRイベントの実施や、和・洋・中とジャンルを問わないさまざまな加工品の開発。流通面でも鮮度保持の手法が確立され、それを順守したものを「ほやの極み」というブランドで差別化する取り組みが昨年から実施されている。

 生食中心だった食べ方についてもさまざまな料理が考案され、産地のみならず関東圏の飲食店でも提供されるようになっている。歌を通じて魅力を伝えようとする人もおり、シンガーソングライターの萌江さんはホヤのアイドル「ほやドル」を名乗り、さまざまなイベントで食べ方や魅力をオリジナル曲に乗せてアピールしている。[....]