クジラ探訪記①南房総に根付く食文化

2021年10月26日

シロナガスクジラの骨格標本

 東京から車で2時間ほど。太平洋を望む千葉・和田浦は典型的な南房総の漁村だ。普段は静かな漁村が一変するのが夏場。今年の観光客は、新型コロナウイルス禍で少なめだが、いつもの夏は海水浴やマリンレジャー客で賑わう。

 さらに活気をもたらすのが、夏に最盛期を迎えるツチクジラの解体だ。捕鯨会社・外房捕鯨がツチクジラを捕獲すると、一定時間熟成させたあと漁港内で解体する。ブログを通じて事前予告もあるため、多くの観光客がダイナミックな解体シーンを目当てに集まる。解体後には飲食店向けや一般向けに直接販売され、近所の住民がバケツを持って買いに来る。

 南房総で「タレ」といえば、焼き肉でもすき焼きでもなく、クジラのタレである。といっても液状のそれではない。スライスしたツチクジラを醤油とみりん、酒、ニンニク、ショウガなどの特製のタレに漬け込み、天日干しする。[....]