<3.11水産防災>風水害なども対象に震災の教訓を反映

2023年3月10日

水産地域全体での防災へ(写真はイメージ)

 あの東日本大震災から12年、今年も3月11日がやってくる。大きな傷痕を残した忘れられない記憶。ここ数年は新型コロナウイルス感染症に翻弄(ろう)されたほか、主要魚種の漁獲不振など被災地にとっては厳しい状況が続く。こうした中でも防災・減災に対する取り組みは徐々に進められている。改めて今後の防災を考えたい。

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 東日本大震災から約12年。この間にも多くの災害が発生した。特徴的なのが地震・津波だけでなく、低気圧の大型化を受けた豪雨災害などが増加したことだ。最近では沖縄県を中心に海底火山の噴火による軽石の漂着など、従来では考えにくかった災害も起こっている。今後も地球温暖化という大きな流れを変えることは難しく、気象・海象条件が厳しくなることも予想される。

 昨年は水産基本計画、漁港漁場整備長期計画が閣議決定され、水産施策も大幅に見直されている。目玉の一つに挙げられるのが「海業(うみぎょう)」だ。漁港を漁業以外で活用し、地域全体として活性化を図り所得向上を目指す画期的な内容だが、多くの一般人を漁港に呼び込むため、防災という観点ではリスクが高まる。

 こうした中で、水産庁は「災害に強い漁業地域づくりガイドライン」の改訂作業を進めている。東日本大震災の検証によって得られた教訓や知見を取り入れ、今後の防災・減災に役立てる考えだ。今月中にも発表されるが、一部内容も漏れ伝わってきた。

 主な内容は(1)対象災害の拡大(2)対象エリアの拡大(3)事前復興の追加-の3つ。地震・津波に加えて高潮・高波・暴風など風水害の対応も記載し、ガイドラインの対象エリアも漁場から陸揚げ、加工・流通まで沿岸域における水産業の全体をカバーする。速やかな復旧・復興を図る事前復興の概念も加わる。このほかにもさまざまな視点から内容が追加される見通しだ。[....]