ズワイの行動メカニズム解明、金沢大学など

2023年5月22日

最終脱皮前後のオスのズワイガニ

 金沢大学、水産研究・教育機構などの共同研究グループは、ズワイガニのオスの最終脱皮前後にみられる行動変化のメカニズムなどを明らかにしたと発表した。ズワイガニの生態解明は、効率的な増養殖技術の開発に寄与する可能性がある。

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 研究グループはファルネセン酸メチル(MF)というホルモン分子に着目し、最終脱皮前後のオスのズワイの血中MF濃度を比較した。すると、MF分解酵素遺伝子などの発現が抑制されることで最終脱皮後にMF濃度が増加していることが分かった。

 さらに、甲殼類と近縁の昆虫類において行動の変化をもたらすオクトパミンやドーパミンなどの生体アミン類のシグナル経路が最終脱皮後のオスの体内で活性化していたことから、生体アミン類が最終脱皮後のオスが攻撃的になる原因である可能性が示唆された。

 繁殖生態の理解は資源管理において重要な知見であるだけでなく、最終脱皮を人為的に制御することで、水産価値の高い最終脱皮後のオスの効率的な生産方法の確立に寄与するなど、効率的な増養殖技術の開発にも役立つ可能性がある。

 研究グループは今後、ズワイと同じクモガニ上科に属する小型で飼育が容易な種で比較解析を進め、そこから得られた成果をズワイ研究にフィードバックすることにしている。

 エビやカニなどの甲穀類は、生涯にわたり脱皮を繰り返すことでサイズの増大や繁殖を行っている。ズワイガニのオスは稚ガニから10~12回脱皮し、最終脱皮をすると鉗(かん)脚(ハサミ脚)が肥大化して行動が攻撃的になることが知られていたが、そのメカニズムは解明されていなかった。[....]