2013年7月30日
生活の糧(かて)となる魚がすみ、漁師の仕事場でもある海環境を守る、JF全漁連ブランドの天然石けん「わかしお」。過去、漁協女性部を中心に活発な普及活動が展開され、環境中で分解されにくい合成洗剤のない“きれいな海”を維持し、前浜の水揚げを陰で支えてきた。
しかし近年、海環境を守る意識が徐々に薄れ、時を同じくして前浜の水揚げの減少が続いている。漁師の生活基盤を守るためには、「わかしお」普及活動を再び盛り上げなくてはならない。昨年度の「わかしお」実績伸び率1位の石川県を訪ね、ヒントを探る。
名峰・富士が世界遺産になったのは記憶に新しいが、世界農業遺産をご存知だろうか。
11年前に始まった制度で、世界遺産が自然を対象とするのに対し、世界農業遺産は地域環境を生かした伝統的農法や生物多様性を守る土地利用のシステムを後世に残すために選ばれる。今までに全世界で25地域が指定された。
先進国かつ日本で初めて世界農業遺産となったのが、石川にある「能登の里山里海」だ。平成23年6月に、新潟・佐渡とともに仲間入りした。
「能登の里山里海」にある輪島港は、刺網、巻網、底引網、定置網のほか、海女(あま)漁が盛んな地域だ。世界農業遺産認定の際に高く評価された。350年の歴史があり、今も約200人が従事する。
アワビ、サザエ、岩ガキといった貝類をはじめ、最近は天然ワカメを使った塩蔵品を、年間40トン規模で生産している。塩蔵ワカメは北陸3県主体に販売され、肉厚で安全・安心と評判になっている。
2年前の世界農業遺産登録を一つのきっかけとして、海環境と共生する意識を改めて育もうと、JFいしかわの女性部では昨年度半ばから、「わかしお」普及活動に本気で向き合い始めた。昨夏、女性部有志で「わかしお」の製造を担当しているヱスケー石鹸の埼玉の本社工場を訪問し、天然石けんの製造現場について勉強した。
JFいしかわ女性部部長の新木順子さんは「海は疲弊し、昔ほど魚が獲れない。温暖化の影響も重なり、海藻も減っている」と危機感を募らせていた。そんな中で「実際に現場を見て、担当者の説明を直接聞くのが大事と思った」と、研修旅行を企画した目的を話す。
研修旅行から戻ると早速、女性部の予算で「わかしお」手洗い石けんを購入。試供品として全員に配った。実際に使ってもらい、「わかしお」定着につなげる狙いだ。以前から行っていた海浜清掃や総会で配る取り組みも続け、「わかしお」に触れる機会を増やしている。
今年度は、さらに一歩進め「合成洗剤の影響や持続可能な漁業に対する勉強会を開いて、海の保全に取り組む」という。
ただ、全国各地の例に漏れず、石川でも若手の間で進行する「わかしお」離れは根深い。「物があふれている時代で育ってきた世代は、何でも買えたし、隣近所に頼らずとも困らなかった。そのせいか、地域で助け合うという連携意識が希薄なことが残念」と新木さん。それが「わかしお」普及活動の盛り上がりを欠く一因にもなってきた。
しかし、漁業を専業とする町の生活がきれいな海で成り立っていることは今も昔も変わりない。「海の汚れは一人ひとりの行動が集まって起きる。海が汚れれば海の食べ物の汚染に直結し、最終的には体に入る。子供たちにも影響する。そんな意識を全員で共有することが大切」と、粘り強く呼び掛けを続けている。
全国的な「わかしお」の販売量の減少は、女性部員の減少とほぼ比例しているが、新木さんの地元ではその影響が小さい。その秘密は、女性部の参加資格を漁師の奥さんに限定せず、漁師町の女性すべてを受け入れている点にあるだろう。女性部の役員には会社員、看護師、保育士さえいる。
新木さんによると、来る者は拒まずの方針は、地元の女性部創設当初からという。「今では漁師の奥さんだけで、『わかしお』普及活動を維持するのは難しい。女性部拡充をはじめ、本組合や青年部など、地域全部を巻き込んだ運動にしていってはどうか」と訴える。
新木さんはもちろん、「わかしお」の商品力にも魅力を感じている。例えば野球のような激しいスポーツをする子供のユニフォームの洗濯で非常に便利。「合成洗剤のように蛍光増白剤を使って見た目だけ白くするのではなく、本当の意味で汚れが落ちる」。アレルギーのある子供の肌にやさしく、合成洗剤に比べ泡切れがよい点も節水につながると評価する。
またクレンザーや炭酸ソーダは、もっと多くの人に知ってほしい商品という。「クレンザーは、トイレ掃除や魚の加工容器洗浄に便利。変わったところではアリ退治にも効く。炭酸ソーダは台所回りの洗い物に便利で、におい消しにもなる」。現「わかしお」のラインアップにも、まだまだあなたの知らない便利な商品が眠っているはずだ。
◆JF全漁連ブランド・天然石けん「わかしお」普及運動が,兵庫でも活発に続いていますね。
森会長/兵庫県下での「わかしお」普及運動は全国でも先駆的なもので約30年ほどになると思います。当時は、各浜を回って合成洗剤と天然石けんの違いを実際に実験し確認してもらうなどして、天然石けんの普及を積極的に進めてきました。
持続可能な漁業を実現していくために、魚がすみやすい海の環境を守るにはよいことを納得してもらいました。こうした活動は7月を中心に毎年行っていました。活動は7年程度にわたって熱心に続けられたと記憶しています。
天然石けん「わかしお」は、食器洗いから洗面所、お風呂場などすべての場所で使えますし、換気扇の汚れなどもきれいに落ちます。洗濯後の衣服の汚れはよく落ちていますし、洗い上がりはさらっとしています。アトピー性皮膚炎の方などにも皮膚への刺激も少なくよいと思います。
現在では一定の認知が進んだこと、また、部員さんが高齢化し減少してきたこともあり、3か月に1回、女性部の役員・部員さんたちが石けんの注文を受け付けて活用を継続していくように努力しています。
◆継続的な取り組みが欠かせませんね。
森会長/お中元やお歳暮などで友人・知人などから合成洗剤をいただく家庭も多いかと思います。そうした家庭では天然石けんを購入することが少なくなります。それでも少しでも活用を広めていこうとの思いから、研修・講習や総会の時の粗品などとしても持って帰ってもらうようにしています。
そのほか水産加工場などにも声をかけて天然石けんを使ってもらうように働き掛けています。衣服から香料の匂いがしないことも、食品を扱ううえではよいことだと思っています。また、石けんを使うと、生活廃水などが流れる側溝でもヘドロの嫌な臭いがしません。
◆全国の普及についてはいかがでしょうか。
森会長/女性連として改めて天然石けんを使っていかなければいけないという意識・機運が従来にも増して高まってきています。天然石けんが環境によいことは、海藻のしおり作りなどを通してアピールもしてきました。
しかしながら、女性連としての活動は都道府県によってもさまざまで、天然石けん「わかしお」をあまり使っていないところもあるようです。まずは各県別に購入量などのデータをとって、そのあとで重点的に「わかしお」を使ってもらうように促していければと思っています。
各県での取り組み状況などを聞いたあとで、兵庫で行っているような、3か月に1回程度、「わかしお」の注文を受け付ける(販売斡〈あっ〉旋をしてもらう)ようにしていくことも可能ではないかと思います。そうして少しでも天然石けん「わかしお」を使ってもらうように広めていきたいと思います。
JF全漁連ブランドの天然石けん「わかしお」とともに、漁協を通じて購入できる、天然成分を使った化粧品「エコーレア」。場合によっては、商品1個単位で注文できるのをご存じだろうか。
各漁協で「わかしお」を発注する時、5ケース以上まとめて頼むというルールは周知の通りだが、「わかしお」の発注可能分を一度まとめることができれば、「エコーレア」は、併せてわずか1個から注文できる。
またエコーレア単独でも、10個以上の発注から送料無料。「発注数がもっと多くないと頼めないのでは?」という心配の声もよく聞かれるが、もっと気軽に、「エコーレア」を頼んでほしい。
「エコーレア」化粧品の基本は、「洗顔」「保湿」「保護」の3つ。肌にやさしい成分と簡単なお手入れで肌本来の力を高め、いつまでも美しい素肌を保つ。クレンジングオイルや日焼け止めクリームなど、新たな商品も続々登場中。普段からもっと使う機会を増やしてみてはどうだろうか。
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