魚に触れる機会つくる、余剰種苗使い無料運営 

2023年8月28日

クロダイとキジハタの稚魚たちと接することができる「ふれあいプール」

 つくり育てる漁業(栽培漁業)の根幹を成す種苗生産機能だけでなく、教育と産業観光の機能を併せもった施設として今春にリニューアルオープンした富山県栽培漁業センター(富山・氷見市)は現在、小学生の子供をもつ家族連れから大変な人気を博している。滞在時間は長くて1時間半~2時間の決して大きくない施設にもかかわらず、3か月間の累計入場者数は2.6万人に達した。猛暑が続いていた8月上旬に同センターを訪ねた。

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 1978年の建設から40年余りが経過して老朽化が進んでいた施設に対して大規模改修をかけたタイミングで、新たに整備されたのが「ふれあい館」と「交流館」という2つの新施設だ。ともに今年4月28日にオープンした。

 中でも人気の「ふれあい館」の目玉は、魚をかたどった深さの違う2つのプールで稚魚に触れられる「ふれあいプール」。クロダイとキジハタという一般に高級魚とされている2魚種が放流されていて、子供たちはプールに足を直接踏み入れて触れ合うことができる。

 多くの来場者が足を運んでいる理由について「新型コロナウイルスの『5類』移行に加え、入場無料なのが大きいのでは」と指摘する飯田直樹所長代理は、栽培漁業の普及啓発や地域振興に有効との評価に加え「種苗の生産過程で出る余剰分を活用している。本来ならあり得ない高級魚のタッチプールを運営できるのは栽培漁業センターだからこそ」と背景を話す。

 想定外だったのは「クロダイが機敏で子供たちにつかまらない」こと。キジハタが人間の手から逃れ構造物の陰に隠れているのとは対照的に、クロダイはプールをわが物顔で泳ぎ回っているのも、魚の性格の違いが分かって面白い。[....]