長距離海中間で高速通信、OKIが成功

2023年7月3日

水中無線通信ネットワークの将来像図

 沖電気工業(株)(OKI)は6月29日、海中の水平方向に2キロの距離で、32キロbpsの通信に成功したと発表した。簡単な映像ならば伝送できる通信速度で、これまでの20キロbpsから1・6倍の高速化を果たした。同社は沖合養殖の設備管理や海洋資源調査など、「海洋産業の効率化が図れる可能性がある」と展望している。

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 電波は水中で透過が難しく、多くが減衰してしまう。そのため海中で機器間の伝達は、音波を利用する音響通信が用いられている。だが、現行の技術では利用できる周波数帯が狭く、伝送できる情報量も限られていた。

 OKIは2020年に洋上母船と海底方向のIoT機器の間で、32キロbpsの通信速度を確保し、映像伝送通信に成功した。ただし水平方向になると、波や電磁波、海面・海底との反射などの影響を受けやすい。特許の関係で詳細は示されなかったが、この課題を重点的に対処したことで、水平方向への高速化を実現。送信できる通信量を向上させた。

 これにより、離れた場所にある機器を遠隔地から効率的にオペレーションする、同社の「水中無線通信ネットワーク構想」に、また一歩近づいた。水中ドローンと呼ばれる遠隔操作型無人潜水機(ROV)や小型無人ボート(ASV)、自律型無人潜水機(AUV)などを船上からの操作で航走させる。海洋資源調査だけでなく、水産分野なら沖合養殖施設の管理や、斃(へい)死魚の回収なども想定できる。

 今回の実験では水中ドローンの操作も想定し、音波の送波機・受波機は長さ1メートル以下の小型器を用いた。今後は通信速度を保ったまま、無人機を中継した数キロ先の遠距離通信や、一つのシステムで複数の機体を広範囲に利用するシステムの実用化を目指すという。[....]