沿岸無線でどこまで届く? 非常時支援へ感度確認 

2023年6月12日

感度調査で発信する三崎局の職員

 全国漁業無線協会(全無協)は7日、沿岸漁業で利用の多い超短波無線の通信感度を全国規模で調査する初の一斉試験を実施した。本来なら電波到達距離が50キロ程度の超短波だが、この時期に形成される特殊な電離層を利用して、どこまで届くかを確認、非常災害時の通信支援に役立てる。神奈川・三浦市の水産技術センター船舶課(三崎漁業無線局)では、直線距離で2000キロ近く離れた沖縄・与那国島局からの声も届いた。

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 沖合・遠洋漁船を中心とする短波(通信距離は数千キロ)や中短波(約500キロ)と異なり、沿岸漁業を対象とする超短波で約50キロの距離を超える通信は、高台など地理的条件がよい局に限られている。そのため、北海道から沖縄まで36の漁業用海岸局(無線局)が参加した今回の感度調査では、時間内に声を拾えない可能性もあった。

 実際に同日は各局が順番に、送信局名を入れた定型文を読み上げたが、ワッチ(聴守)する三崎局には隣県の静岡からも届かない。だが、北海道の網走と根室からは感度・明瞭度とも非常に高い声で届いた。近県の千葉は辛うじて聞こえる程度で、与那国島は途中で音声が途切れたものの、沖縄・南大東はクリアに聞こえた。

 全国で500局以上ある当海岸局は、多くが27メガヘルツの超短波通信を利用する。だが、出力が1ワットと微弱なこともあり、通常は所属する沿岸漁船との交信に限られる。ただし、春から夏ごろにかけ、上空100キロ付近で突発的に形成される電離層「スポラディックE層(Eスポ)」が利用できると、その日の天候にもよるが、長距離まで到達することが経験的に知られていた。

 三崎局の加藤俊明副技幹も「確かにこの時期、東北や沖縄から漁業者同士らしきやりとりが聞こえることがあった」と言う。

 また毎年秋には茨城、千葉、東京、神奈川の4都県で超短波の感度調査は実施しており、聞こえる時もあったそうだ。ただ、今回のように全国一斉の調査は初めてで、「北海道や沖縄から聞こえることが確認できた」とし、「逆に三崎からの声はどこが拾えたのか」と、興味深げに語った。[....]