創業110年、沼津港の活性化に取組む「佐政水産」

2023年6月29日

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港八十三番地全景

 水産会社の佐政水産(株)(静岡・沼津市、佐藤慎一郎社長)は、祖業である水産部門にとどまらず、地元の観光資源である駿河湾の深海魚をブランド化し、飲食業や水族館・アトラクション事業を手掛け、沼津港一帯の活性化を実現している。沼津港の水揚げが減少していく中で観光業に投資し、それが地元の魚の価値を高めてセリ値も上がる好循環を創出。また荷受として全国からの集荷も強化している。1913年の創業から110年を迎えた、佐政水産の今を紹介する。

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◆沼津港・港八十三番地

 2011年12月10日、旧本社跡地(住所・静岡県沼津市千本港町83番地)に開業させたのが「沼津港 港八十三番地」だ。中核施設「沼津港深海水族館-シーラカンス・ミュージアム」をはじめ、23年3月末時点で直営9施設含む15施設が営業している。

 水産業が衰退していく中、伊豆や箱根、富士山といったエリアに囲まれる沼津港の立地は、観光のポテンシャルが高いと考え、新規事業として取り組んだ。またその中で目を付けたのが沼津港の底びき網漁で水揚げされる深海魚だ。目の前の駿河湾は、日本一の深さを誇り、急深のため底びき網漁の漁場も近く、鮮度もよいので、刺身でも食べられる。

 08年に作った自社加工場ではプロトン凍結機を導入し、深海魚を中心に一本凍結(IQF)や加工品を製造して販売してきていた。その商品を使用する飲食店からは沼津の深海魚の評価がとても高いことに気付き、港八十三番地の開業の際、「深海魚」を前面に押し出してブランド化した。

 それまで水産業界では深海魚という言葉は「グロテスク」「気持ち悪い」というイメージのためにほとんど使われてこなかったが、現在ではスーパーなどでも普通に使われるようになっている。

 また、観光地価格ではなく、地元の人にも利用してもらいやすい価格での提供や、メニューの2割には地元食材を使うなどのルールを設けたため、夜も地元の人が来てくれるようになった。そのため、新型コロナウイルスの影響を受ける中でも観光業は売り上げ6~7割減といわれる中、3~4割減で乗り切ることができた。

 また、食事や物販だけでは、全国にあるあまたの漁港と変わらない。そこで観光の目的地になるような施設を作ろうと考え、日本初の深海に特化した水族館「沼津港深海水族館-シーラカンス・ミュージアム」を開業した。[....]