廃校が漁業をつぶす

2016年2月26日

子供がいっぱいいる答志島において、まさかそんな話が生じているとは思わなかった。答志島で最も本土鳥羽に近い桃取小学校(生徒15人)が中学に続き廃校となり、来年4月から船で本土に通学するらしい。答志小学校と中学校の生徒数は79人と60人なので、これは安泰かと思ったら、鳥羽市の方針で4つの離島のうち遠い神島を除き、まず中学校を次に小学校を順に廃校にしていくらしい。

 これは絶対まずい、これでは漁業もつぶれ、元も子もなくなる。というのは、子供が1人もいなかった熊野の漁村に住んだ時に、廃校は子供が少なくなったので仕方がないと思ったが、その後、村に若い漁業者がいなくなったのは、廃校が大きな要因と確信したからである。漁業が厳しいだけであれば自分が努力すればすむが、小さな子供の長時間バス通学の苦労を中学までの9年間負わせることを考え、漁村を去っていったのである。

 ちょっとした例外もあった。熊野の漁村に住んでいた加工業を営む若い夫婦に、津市での海産物即売会の時に再会したら、隣に小学校低学年の女の子がいた。村で1度も見かけたことがなかったので「誰?」と聞くと、娘さん。娘さんは小学校のある町のおばあさんの家で生活していた。この場合では親が子供と一緒に住めない「寂しさ」を背負った形で何とか村に残っていたのである。

 漁業衰退→子供減少→廃校→若い漁業者離村→漁業衰退(崩壊)の連鎖が生じている。さらに致命的なのは、この連鎖が不可逆的であること。若い漁業者が参入しても、子供が就学年齢に達すると同じ問題に遭遇し、また出ていくのである。廃校は漁業にとどめを刺しかねない大問題である。今よりはるかに貧しかった戦後の時代に、山奥や離島の隅々にまで学校をつくった昔の政治家は本当に偉かったと思う。

 答志小・中学校はナイター練習までして、ソフトボールの県大会で優勝したこともある。子供のため、漁業のため、何としてでも廃校を阻止せよ! 九鬼水軍の末裔の魂をみせてやれ!