定置網と数量管理

2017年7月25日

 私は水産庁時代にクロマグロの資源管理を担当したことがなく、これまでこれに言及することは避けてきた。しかし、先般本紙で報道された7月1日から始まった管理シーズンにおいて、1年間分の漁獲枠を道南定置が4日間、岩手県定置が6日間で達したことを知って懸念した通り「やっぱりそうなったか」と、ひと言いわざるを得ない気持ちになった。

 私は4年前に熊野でヨコワ釣りに乗船した。一日暑い思いをしてたったの2尾しか釣れなかった。ところが、昨年は一日60?80尾も釣った漁業者がいたと聞いて「とんでもない量の加入群が来た」のを知った。加入予想ができず、かつその変動幅が非常に大きいマグロ資源に過去のデータから算出した数量管理を導入すると、当然このような結果になる恐れが高いと思っていたからである。

 しかも、定置網は選択漁獲も努力量調整も非常に困難な漁法である。できることは魚捕り部の目合いを拡大し、本当に小さな魚を逃がす程度の取り組みだけだろう。再放流といっても網で擦れた魚が生き残る保証はない。究極の管理の網上げは、1のマグロ保護のために99の他魚種も失うので漁業自体が成り立たなくなる。
 現場では「いくら国際約束といわれても、できないことはできない」という声が高まり、一方マスコミでは「約束を守らない漁業者はけしからん」の報道も増えてくるだろう。

 しかし、双方とも資源管理の本質(漁獲率の調整)を忘れているのではないかと思う。漁業者は休漁などで確実に獲り控え(漁獲率削減)している。が、想定以上の加入量増加のため今回のことが起きた。だから国際約束が守られていたかどうかは、後日分かる加入実績に基づく資源評価を踏まえ判明する。

 予測不能な加入量をさも科学的と称して算出した数量管理のいい加減さが露呈しただけ。資源が減っているならまだしも、増えても批判されるのはどういうことか。(佐藤力生)。