増えても獲るな!の新資源管理

2019年6月11日

 一定の親子関係がない現実の資源に無理やり最大持続生産量(MSY)理論を適用したらどうなるか。それが今のクロマグロ資源管理で起こっていること。勝手に増えたマグロが勝手に定置網に入ったあおりを食って関係のない漁業者までが6年間採捕枠ゼロにされた。資源が増えたゆえに漁獲枠がゼロになるとはどういう資源管理か。このため若い漁業者の新規参入ができなくなったという。しかも定置からの放流魚が死んで「マグロ底びき網漁業」が出現しては、資源管理効果もない。問題はこれだけではなかった。先般開催された全国沿岸漁民フォーラムでの沿岸マグロ漁師からの現地報告では「イカ釣り漁業者からもっとマグロを獲ってもらわないと困ると言われた。集魚灯に集まったイカをマグロが追い回し、自動イカ釣り機の針にまで食いつき全然操業にならない。ここまでひどいのは初めて」と。イカ釣り漁師はもともと大不漁のところに、マグロ資源管理のとばっちりを食らってとんだ災難。フォーラムの主催団体の会員が1万人を超えたのも、国の新資源管理への強い漁民の憤りの表れといえよう。

 近海カツオマグロ漁業での漁獲量が昨年比4倍近くに急増し、早期操業停止で資源評価データが取れなくなることから保留枠を放出するらしい。資源が増えたゆえにデータすら集まらなくなるとは笑えない冗談のよう。
 「資源が減ったから獲るな」は分かるが、「資源が増えても獲るな」というのが新資源管理。その理由は親子関係を表す再生産成功率(RPS)が大きく変動する現実を無視して平均値を使用し、しかも良好なRPSが連続した時にしか達成できない高い目標を掲げた架空の世界でTACを決めているから。卓越年級群をうまく利用し、経営の安定と資源回復を両立させたマサバの資源回復の手法になぜ学ばないのか。国は「増えても獲るな」方式を他魚種にも拡大するが、これでは漁師は生きていけない。