ダークサイド

2017年9月13日

 「独り負けニッポン漁業」とデカデカと表紙に掲げた「日経ビジネス」8月28日号が出版された。ちょうど3年前の8月に「魚を獲り尽くす日本人」という衝撃的な見出しを掲げた月刊誌「ウェッジ」が出版された時を思い出した。どうも夏休みを取るのに忙しい記者が、テキトーな取材で紙面を埋めることができるのが漁業批判記事のよう。もちろんその内容は、毎度おなじみ平気で嘘(うそ)をつく一部の学者?の主張の丸写しで全く新鮮味なし。

 それにしても経済界御用達の日本経済新聞の子会社がこのような見出しを付けて恥ずかしくないのか。日本は先進経済国の中で唯一デフレ経済下にあり、経済成長率や実質賃金などの推移をみても「独り負けニッポン経済」の状態。自分の頭の上のハエを追うのが先。3年連続で生産額がプラスの日本漁業に向かって、どの口で言うかと頬をつねってやりたい。 

 今回の特集は、外部強欲企業に資源と漁場を開放せよとの規制改革への応援であるが、それに関連しもっと心配な記事が8月3日付の週刊新潮に載った。「内閣人事局がぶっ壊した霞が関の秩序 『森友記録』破棄の官僚も出世」が見出しで、要約すれば、政治主導人事で、官邸の意向に沿った幹部(森友問題で、記録も記憶もありませんと国会で答弁した局長)が出世したことへの警鐘である。そこにはこの夏の農林水産省の人事に関する部分もあり、これに従えば農協つぶしに続き、いよいよ漁業権・漁協つぶしのための官邸主導の人事シフトが敷かれたことになる。

 これまでの規制改革では、再び規制強化したタクシー業界の惨状に象徴されるように成果はなく、逆に競争激化でデフレを悪化させただけ。だから全体の奉仕者であって一部(強欲企業)の奉仕者ではない公務員が、葉隠にある「主君の命令であれ意見を申し立てて諭(さと)す」のが責務。新水産庁長官がダークサイドに引き込まれないよう祈るばかり。