いるのに獲れない

2017年8月16日

 答志島に来て3回目のサワラ流し網漁期を迎えた。1年目は「こんなことは初めて」というほどの豊漁で、これは1年限りかと思っていたが、2年目も豊漁が続き、何と今年もいきなり初日から大漁で、その後も順調に漁が続いている。ところが同じサワラを対象とするひき縄釣り漁船の方は近年にないほどの不漁で、さっぱり釣れないのである。

 その理由は、サワラの遊泳層が表層近くにあるとひき縄釣りがよく、深い時には刺網がよいとのことで、今年は極端に後者であるから。それにしてもこの漁法による明暗をみて、仮に当地にひき縄釣り漁法しかなければ、漁業者は絶対に資源が悪いから釣れないと思うはずであり、改めて資源と漁獲の関係を考えさせられた。

 かつて日本海のブリ定置網漁業者が、国のブリ資源評価が良好となっていたのに対し「そんなはずはない、全然ブリが入網しないのは資源が減っているからだ」と文句を言って、研究者が困惑していた時のことを思い出した。現場にいるとその思いはよく分かる。なぜなら、魚の獲れない原因が、資源が悪い、漁海況に恵まれない、他人が多く獲る、のいずれか区別がつかないからである。

 一般的に釣り漁業では同じ魚種を漁獲する網漁業に対する反発が強いが、今年においては刺網漁業の状況から資源は多いことは認めざるを得ず、ひき縄釣りの漁業者は漁海況の変化を待つしかなく「盆が過ぎれば釣れるようになるか」と諦め顔。

 この「いるのに獲れない」現象は何ともやりきれないものであるが、近年のサンマ漁業も漁場形成の観点からある意味似ているかも。今年サンマが全く獲れなかった熊野市の漁業関係者が水産庁に「どうにかなりませんか」と陳情に行ったら、「どうにもなりません」と海況の話をされただけでトボトボと帰って来た。

 自然による資源管理と割り切ってか、それに黙って耐える漁師の姿は偉い。