「理論と心」備えた強力な助っ人

2017年8月30日

 東京大学教授「鈴木宣弘(のぶひろ)」先生を知っている方は多いと思う。何といっても先生は、TPP絶対反対の立場の学者として有名であり、以前テレビで甘利明元TPP担当大臣が先生の厳しい追及に渋い顔をしていたのが印象に残っている。私は先生のTPPに関する著書を読んで非常に勉強になったが、同時に著書からは「こんなことが許せるか!」という強い憤りと弱者の立場に立つ正義感というものが強く伝わってきた。

 なぜそう感じたのか最近分かった。先生は三重県志摩の出身とは知っていたが、何とご実家は真珠養殖を営んでいる半農半漁の家だったのは知らなかった。そのきっかけは、先生が中学校同級生の鳥羽磯部漁協の佐藤真理子共済課長さんに、漁業権の勉強がしたいと連絡されてきたこと。規制改革推進会議が農業に続き漁業を標的にしたことを心配されたのである。そこで私に相談があり、それならといちばんの適任者を紹介させていただいた。

 有名な先生が漁業に関心をもっていただけるのは大変ありがたいが、農業経済の専門家であり大丈夫か、という思いが少しあった。しかし、今般先生と直接メールをやり取りする貴重な機会を得、そこで先生から「小さい頃から、アコヤ貝の貝掃除、冬場のノリの摘み取り、干して袋詰め、ウナギの給餌、カキむきの補助、田植え、稲刈り、野菜作りなどを日常的に手伝いながら育ちました」とお聞きし驚いた。私などよりはるかに漁業現場のことが分かっておられ、「理論と心」を兼ね備えた「鬼に金棒」の先生であった。また、その「1%の強欲者が喜ぶだけの規制改革で地域を犠牲にするのは許さない」という強い正義感は、半農半漁の地に生まれ育ったところからきていることも理解できた。

 先生は9月1日に東京で開催される「沿岸漁業の未来フォーラム」で特別講演されるらしい。まさに漁業にとって強力な助っ人の登場である。