料理人の卵が新レシピ挑戦、宮城の「低利用魚」チダイ使用 

2023年7月4日

マイナー魚種のカナガシラで作ったさつま揚げを試食する生徒ら

 宮城県では「低利用魚」として扱われるチダイのレシピ開発に地元の調理専門学校生が挑むことになり、県南の水揚げ拠点・亘理町荒浜漁港で6月30日、生産者から関連情報を学ぶ特別授業が行われた。優れたアイデアは冬をめどに商品化される予定で、関係者は「料理人の卵らしい柔軟な発想で新たな味わいを生み出してほしい」と期待を寄せている。

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 県仙台地方振興事務所が展開する地産地消推進策の一環。レシピ開発は仙台農業テック&カフェ・パティシエ専門学校調理師科の1年生34人が担う。県によると、生徒は5チームに分かれて各1~2品を考案。11月末までに2度の審査で優秀作品を選び、荒浜漁港にある直売施設・鳥の海ふれあい市場などで惣菜、弁当にして販売する。

 特別授業ではJFみやぎ仙南支所の佐伯智宏支所長、木村光子水産加工研究会長、(株)庄福丸で加工部門責任者を担う清水谷結香さんが講師役となり、それぞれに現場での苦労や思い、課題解決に向けた取り組み、低利用魚の特徴などを簡潔に説明した。生徒たちが挑むレシピ開発には「低利用魚の価値を底上げするような人気料理を考えてほしい」「普及性も考え、それほど手間のかからないものにしてほしい」などと期待を寄せた。合間には水産加工研究会が製造・販売する人気商品「さつま揚げ」を試食。木村会長が低利用魚だったカナガシラを素材にしたこと、ネックだった多くの小骨を手作業で除去したこと、生産量が増えて浜値が底上げされたことなどを説明すると、笑顔で頬張りつつも熱心にメモを取っていた。

 レシピ素材のチダイは北海道から九州の沿岸に広く分布するが、宮城では水揚げがごくわずかでなじみの薄い存在だった。ところが数年前からみるみる増大。温暖化の影響なのか、同じ南方系のタチウオなどとともに「県内どの港でも数量は右肩上がり」だという。一方で浜値は伸び悩み気味。見た目も味わいも高級魚のマダイに負けず劣らずだが、宮城には加工品を含めてチダイの食文化が一切なかったためで、その創造と定着が大きな課題になっている。[....]